【写真特集】「幸福の国」ブータンの2つの顔
ニューズウィーク日本版 / 2016年1月20日 16時30分
スマートフォンとソーシャルメディアの時代にあって、外国人の旅行がいまだに厳しく制限される国がある。四六時中監視の目が付きまとう北朝鮮やトルクメニスタンは、政権が何かを隠したいのだろう。だがヒマラヤ山脈の東端にある人口80万人足らずの秘境ブータンの場合、付き添いガイドはあくまで国民の幸福を守るためにある。
ブータンを訪れる旅行者は皆、1日200~290ドルの滞在費とガイド同行が義務付けられる。旅行中に自由を著しく制限されるわけではないが、「コースから逸脱する」ことは許されない。
99年までテレビやインターネットすら禁止され、世界から隔絶されていたブータンは、72年に独自の指標GNH(国民総幸福)を提唱。環境や文化的価値観の保護など国民の幸福度を高める政策を進めている。
だが幸福の受益者は、あくまで国民に限られるらしい。90年代にはネパール系少数民族ローツァンパを脅威と見なし、国外追放を強行。隣国インドから出稼ぎに来る労働者は、極端に安い賃金で単純労働を担っている。
幸福の国のもう1つの側面は、旅行者からも幸福量指数からも巧妙に隠されているようだ。
西部の町パロに住む20代の夫婦は普段洋服を着ているが、この日は僧侶に会うために伝統衣装を着ている
首都ティンプーのナイトクラブでは女性のダンスを客に見せており、こうした店が売春の温床になっているとの指摘も
高速道路の建設現場で働くインド人女性労働者
ティンプーで評判の美容室には王族や政府高官の妻らが髪を切りに訪れるという
仏教の僧侶を映し出すブータン映画。テレビがまだ禁じられていた80年代から映画は人気に
旅行者がレストランで食事するのを待つガイド。旅の一部始終は静かに監視されている(ティンプー)
遠足に行った先で携帯端末でゲームに興じるティンプーの私立小学校の児童
母親が高速道路建設現場で働く間、傍らで2歳の妹の面倒を見ながら待つインド人少女
公共の場での喫煙が禁じられているブータンで、路地に隠れてたばこを吸う学生(ティンプー)
Photographs by Vlad Sokhin-Panos
<本誌2015年10月27日号掲載>
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Photographs by Vlad Sokhin
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