予備選直前にペイリンの支持を取り付けたトランプの目算 - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代
ニューズウィーク日本版 / 2016年1月21日 16時10分
この2州のうちニューハンプシャーは、東部で自分の地盤であるニューヨークからも近いことで、優位に選挙戦を進めていましたが、アイオワでは「ドブ板選挙」を徹底していたテッド・クルーズ候補に先行を許していたのです。
そんな情勢を受けて、年明け以来のトランプ候補は「クルーズ叩き」に走っています。それも「カナダ生まれのクルーズ候補は大統領候補の資格なし」という一方的な法理論でのバッシングだったのですが、それがどういうわけか効いたようで、世論調査の1位を奪っています。そうではあるのですが、トランプ陣営としては「安心できない」と踏んでいるのでしょう。
そこへ「サラ・ペイリンが支持」ということになれば、一気にアイオワでも1位を固めることができるというわけです。
一部には、トランプ候補はペイリン氏に対して「副大統領候補のイス」を与えるという密約を結んでいるという説も流れています。そのペイリン氏は何度も「トランプ氏は交渉上手」だと持ち上げているところを見ると、その密約説には一定程度の真実味はあります。ペイリンの支持を「今」必要としているトランプは、そのような「大胆な交渉をして来た」、そんな憶測も可能だからです。
では、この動きを受けて選挙戦はどうなるでしょうか?
まずテッド・クルーズ候補は苦しくなってきました。アイオワで首位を取って勢いをつける構想は風前の灯で、頼みにしていた「ティーパーティーのボス」であるペイリン氏にも裏切られたばかりか、アイオワの州知事からも「エネルギー政策で相容れないクルーズ候補は支持しない」と突き放される始末です。もしかすると、意外に早い時期に息切れするかもしれません。
仮にクルーズ候補がジリジリ後退するようですと、「エスタブリッシュメント」と言われる職業政治家グループの中では、ルビオ候補が浮上してくるでしょう。良いタイミングで、ジェブ・ブッシュ候補が「自分は撤退してルビオ候補を支持」という宣言をすると勢いが出るかもしれません。
興味深い動きとしては、ニューハンプシャー州の世論調査で、オハイオ州のジョン・ケーシック知事が2位に浮上してきており、一部の調査では20%と有力になってきているということがあります。選挙戦の最初からトランプ氏を「共和党の大統領候補としては不適格」であると一貫して批判してきた姿勢、そして中道実務家の常識人というキャラが、ここへきて輝いてきているということのようです。
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