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「台湾は中国の島」という幻想を砕いた蔡英文の「血」

ニューズウィーク日本版 / 2016年1月22日 15時0分

台湾人を悲しませた国民党

 しかし、国民党政権はこれまでの征服者と異なって、強権的な政治を行う。47年春には「2・28事件」と呼ばれる大量虐殺を働き、87年まで40年間にわたって戒厳令を敷いた。国民党の政治的な手法は好敵手の中国共産党とさほど変わらなかったので、台湾人を徹底的に悲しませてしまった。

「国民党は敗れるだろう。悲劇なのは、なぜ自分たちが嫌われているかすら分かっていないことだ」と台湾人の識者は指摘していた。昨年11月には馬英九(マー・インチウ)総統と中国の習近平(シー・チンピン)国家主席が華僑国家のシンガポールで会談。非公開で共同会見すらない「密会」で、92年に中台双方が「中国は1つ」と認め合ったとされる「幻のコンセンサス」を再確認し合った。

 だが文書もなく解釈も曖昧な合意の存在を蔡の民進党は依然として認めず、国民党は台湾人の中国からの遠心力を食い止めることができなかった。

 新総統は事実上の「フォルモサ共和国」をどういう方向へリードしていくのか。虎視眈々と彼らをのみ込もうとする大陸中国とどんな関係を構築するのか。南シナ海や東シナ海において、台湾と同様な危機に直面している日本はいかに同国に関与していくべきなのか。すべてがこれから問われる。


[2016.1.26号掲載]
楊海英(本誌コラムニスト)


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