「予備選」が導入できない日本政治の残念な現状 - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代
ニューズウィーク日本版 / 2016年2月2日 17時15分
アメリカは大統領選挙の年を迎えて、いよいよ予備選レースも本番となって来ました。この予備選制度ですが、大統領の場合ですと7月の民主党・共和党の党大会へ向けて、各州で選挙を行ってそれぞれの党の統一候補を絞り込むことになります。当落の決定は、人口比で各州ごとに決められた「大統領選挙の代議員数」を基準として50%を超えたら勝利が確定するというシステムです。
ですから、実際はカリフォルニア、テキサス、ニューヨーク、フロリダといった人口の多い、従って代議員数も多い州を取った候補が有利になります。ですが、この2月の初旬に行われているアイオワ州やニューハンプシャー州といった「代議員数の少ない州」がどうして話題になるのかというと、それぞれが草の根民主主義の伝統に誇りを持っているのと、序盤戦のスタートダッシュがレース全体に影響を与えるからです。
実は、予備選というのは大統領選挙に向けて行われるだけではありません。上院議員選挙、下院議員選挙、そして各州の知事選挙から、さらには地方議会の選挙まで、多くの選挙において予備選が行われ、民主党と共和党の候補を決めます。最終的な本選挙だけでなく、各党候補をそれぞれ1人ずつに絞り込むのも「民意」というわけです。
【参考記事】アイオワ州党員集会 共和党は正常化、民主党は異常事態へ
では、この「予備選制度」ですが、日本での導入というのは可能なのでしょうか?
可能であれば、是非実施すべきだと思います。本来であれば衆議院に小選挙区制が導入された時点で、この予備選制度の導入を真剣に検討すべきだったとも言えます。小選挙区だけでなく比例代表もそうですし、衆議院だけでなく参議院でもそうです。基本的に政権交代可能な二大政党制という考え方は、同時に制度的には予備選というシステムとセットになることで、効果が発揮されるからです。
理由はたくさんあります。
まず、候補者の選定プロセスに透明性が生まれれば、それだけで候補への信頼度が高まります。また予備選段階での報道や選挙運動を通じて、争点がハッキリすることで、本選への意識も高くなります。予備選をしっかり実施できる政党は、明らかな優位に立てるはずで、それが明らかとなれば両政党が予備選を活用するようになり、二大政党による小選挙区制が活性化されるのは確かです。
日本では、かなりハッキリした「現職優先」という考え方があります。アメリカでも大統領選では「2期目を目指す現職」は優先されるのでほぼ無風選挙になりますが、議員の場合はそうではありません。現職であっても、毎回の選挙で党内の対立候補の挑戦を受け続ける、その中で民意との乖離を埋めていくのです。ところが、日本の場合は現職がまず優先されるので、民意と離れていても当選回数を重ねていくという弊害があります。
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