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パレスチナ人の一斉蜂起「インティファーダ」は防げるか

ニューズウィーク日本版 / 2016年2月3日 16時0分

 こうした介入が続けばアッバスの支持率低下は加速しそうだ。12月の支持率は35%と、半年前の44%から急落した。同月のPSRの調査でも、パレスチナ人の3人中2人がアッバスは退陣すべきだと考えている。議長としての正統性の問題もある。アッバスが議長に選出されたのは05年1月で任期は09年に切れている。しかしパレスチナはファタハが実効支配する西岸とイスラム過激派組織ハマスが実効支配するガザ地区とに分裂したままで、選挙の見通しは立っていない。

 前任者のヤセル・アラファトは歴戦の勇者でけんかっ早いところがあったが、アッバスはどことなく学者風で感情を表に出さない印象だ。社会不安について公の場では短い発言しかせず、自治政府の長というより政治コメンテーターのようだと、パレスチナの政治評論家ハニ・マスリは言う。

 アッバスは新たな蜂起は望んでいないと、ニムル・ハマド自治政府議長補佐官は主張する。「インティファーダはパレスチナ人の利益にならず、いかなる和解にもつながらない。われわれは交渉による紛争解決を望んでいる」

「弱腰」批判に反論も

 最近はファタハ内部からも、イスラエルとの対決姿勢を強めるべきだという突き上げがある。

 アッバスはイスラエル軍との治安協力を停止するという昨年のPLO中央評議会の決議を守るべきだと、ファタハのナイム・ムラルは言う。西岸のユダヤ人入植地で製造・栽培されたものだけでなく、すべてのイスラエル製品に対する不買運動を承認し、イスラエルの指導者たちを戦犯として国際刑事裁判所で裁くよう強く要求すべきでもある、とムラルは主張する。「ファタハの政治的立場は蜂起の動きと一致させるべきだ」

 マスリも同じ意見だ。「アッバスは発言も行動も指導力を発揮することもしない。枝葉末節の問題にあくせくしている」。マスリによれば、「指導部は袋小路に迷い込んでいる。何をすべきか途方に暮れている。住民に進むべき道を示せるような有効な計画を打ち出せていない。住民は各自の判断で行動するしかない」

 自治政府のハマドはこうした見方に異を唱える。弱腰に見えるのはアッバスの戦略で、国連、アメリカ、EU、ロシアなどをはじめ、影響力を持つ国際機関や国を説得して、西岸での新たな入植地建設と既存の入植地での住宅建設を中止するようイスラエルに圧力をかけさせるのが狙いだと主張する。「イスラエルが今後も入植凍結を拒否し、合意内容の履行を尊重しないなら、国際社会も介入せざるを得なくなるはずだ」

「パレスチナ人の中でも合理的な考え方の持ち主にとって、アッバスは最善の選択肢」だと、あるパレスチナ治安部隊幹部は匿名を条件に語った。「100%支持されているわけではないことは本人も自覚している。ただ、責任ある指導者の役目というのは人々をAという地点からBという地点へ連れて行くことだ。たとえ、AよりBのほうがいいことを人々が理解していなくても、だ」

 今後、暴力はエスカレートしそうだとPSRのハリル・シカキ所長はみている。どの程度悪化するかは、イスラエルとの抗争だけでなく、パレスチナ自身の内部抗争の行方次第かもしれない。

[2016.2. 2号掲載]
ベン・リンフィールド


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