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中国は北朝鮮を説得できるのか?――武大偉氏は何をしに?

ニューズウィーク日本版 / 2016年2月4日 17時0分

 だからこそ、一定程度までの情報なら取得できる、という状況が続いているのである。

 中国としては、核実験もミサイル発射に関しても「あの若造は中国の言うことに耳を貸さない」ということを学習してきた。
 
 しかし何としても、六か国協議に関してはせめて「席に着く」というところまでは持っていきたい。席に着いてから何らかの妥協点にいたる「結論」が出るか否かに関しては、希望を持っていないだろう。

では、中国はどうするつもりなのか?

 中国の今年の春節は2月8日で、2月7日から13日までは春節連休となる。

 これを口実に、連休以降まで国連制裁決議の結論を延ばし、その間に「何らかの」譲歩を北から引き出すというのが、今の中国にできる精一杯のことなのかもしれない。

 結論的に言えば、武大偉氏が、李源朝や劉雲山ができなかったことをできる、というようなことは「ない」ということだ。

 また「アメリカには、北朝鮮に崩壊してもらうと朝鮮半島に米軍を駐留させる大義名分がなくなるので、北朝鮮が崩壊することをアメリカは望んでいないという事情がある」と、中国は踏んでいるということである。

 これは筆者にとって新しい知見だった。今回の取材の最大の収穫であったと言っても過言ではない。

 となれば、米中と中朝の間の水面下の交渉は単純なものではなく、今般取材した中国政府関係者が言うところの「アメリカの政治ゲーム」をあざ笑うかのような「あの北の若造」の暴走を抑制する困難性を一層際立たせる。

 北朝鮮が崩壊することを望んでないのは、中国だけではなくアメリカも同じで、ただアメリカの場合は、崩壊寸前までは北朝鮮を、いや「中国を」追い込みたいというポーズだけは取っていなければならない国内事情があると、中国は見ているということが、今回の取材から見えてきたように思う。

追記:なお本稿はあくまでも「中国側がどう思っているのか」に関して書いただけであって、実際にアメリカがどう思っているかに関して論考したものではない。その問題に言及すると、日本の米軍基地問題に触れなければならなくなるので、ここでは省く。

[執筆者]
遠藤 誉

1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など著書多数。近著に『毛沢東 日本軍と共謀した男』(新潮新書)

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

遠藤 誉(東京福祉大学国際交流センター長)


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