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レゴ社の「原点」が記されていた1974年の手紙

ニューズウィーク日本版 / 2016年2月5日 14時50分


 その後、レゴ社は完成した模型の写真を外箱に印刷し、それ用にあらかじめつくられたキットを販売することで、この手紙に示された「想像力の大切さ」を引っ込めてしまいました。レゴ社のエンジニアが設計した立派な宇宙船や海賊船を目にした子どもたちは、想像力をはたらかせることなく、ただ説明書にしたがってブロックを組み立てるようになりました。こうしたやり方はレゴ社にとって大きな経営判断だったのかもしれませんが、多くの子どもたちにとっては想像力をふくらませる貴重な機会を失うことになり、大きな打撃になったといえるでしょう。

 想像力が必要とされるのは、子どもの遊びにかぎった話ではありません。私たちは想像力を使って、自分自身の人生の見通しを立てます。可能性は何通りもあり、想像力が豊かであればそれだけ鮮やかなイメージを描くことができます。ところが想像力が乏しいと、過去の延長線上でしか考えることができず、他の人とおなじことをして、代わり映えのしないイメージを思い浮かべることしかできません。

 確固たるイメージは、並外れた偉業を支える土台にもなります。アマゾンの創業者で最高経営責任者(CEO)ジェフ・ベゾスを見ればおわかりいただけるでしょう。ベゾスは一九九五年の創業当時から、世界規模の巨大企業を経営する姿をしっかりイメージしていました。アマゾンという社名は、世界一の流域面積を誇るアマゾン川と、ギリシャ神話に登場する伝説の女戦士の国アマゾネスにちなんだものです。小さな新興企業がいずれ堂々たる巨大企業に変貌を遂げることを見越して、慎重に選ばれた名前なのです。

 マーティン・ルーサー・キング牧師の「私には夢がある」という有名な演説も、想像力の大切さを教えてくれます。人種間の平等の実現というキング牧師が描いたビジョンは、社会運動のうねりを起こすきっかけとなりました。「私の四人の幼子が肌の色ではなく、その個性で判断される国になる」ときを思い描き、そのビジョンを国民に語りかけたのです。

 夢をどう描くかは自分次第であり、私たち一人ひとりにかかっています。スタンフォード大学の卒業生、カイ・カイトの経験談には説得力があります。長年バイオリンを学び、将来を嘱望されていましたが、最近、自分以外の人間の夢を演じていたのだと気づいたといいます。きっかけは、母親が乳がんと診断され、宝石店を営む夢を断念せざるをえなくなったことでした。

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