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北朝鮮のミサイル発射と中国の海洋戦略を結ぶ点と線

ニューズウィーク日本版 / 2016年2月18日 16時30分

【参考記事】尖閣問題は日中激突時代のプレリュード?

 近代中国の海軍は伝統的に北部の渤海湾から山東省の威海にかけて配備され、南シナ海への進出は遅れている。東南沿海部へ全面展開するにしても、九州・沖縄から台湾、フィリピンなどを結ぶいわゆる第一列島線を突破するには、大連といった北部基地との連携が不可欠だ。

 その東隣に日米両国の軍隊が陣取る事実を中国は見たくないだろう。在韓米軍が朝鮮半島に高高度ミサイル防衛(THAAD)を配備すれば、日米の監視は北朝鮮だけでなく、中国にまで及ぶ。そうなれば中国は尖閣諸島を奪取し、第一列島線を突破して太平洋に出て行く戦略が挫折する。中国本土が在韓米軍の攻撃圏内に入ることにも我慢できないはずだ。

【参考記事】中国訪韓、対北朝鮮制裁に賛同の用意あり──THAADの配備は牽制

 北朝鮮のミサイル発射のときも、中国は日米両国の演習を「見学」したがる一方、北朝鮮に融和的という国際社会からの批判もかわしたかった。そのため、とっくに形骸化した6カ国協議を担当する武大偉(ウー・ターウエイ)朝鮮半島問題特別代表を平壌に派遣して説得するアリバイ作りも忘れなかった。すべては中国独自の戦略に則した動きとみていい。

 今後、懸念すべき点は2つある。1つは、日本が今の日米連携に慢心するあまり、尖閣を虎視眈々と狙う中国の野心を忘れて北朝鮮に専念してしまうこと。もう1つは、国際社会も「小悪」の金王朝を非難するばかりで、未熟な3代目坊ちゃん金正恩(キム・ジョンウン)第1書記を背後から支える「巨悪」中国の国際社会における横暴を見逃すことだ。

[2016.2.23号掲載]
楊海英(本誌コラムニスト)


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