トランプの巧妙な選挙戦略、炎上ツイートと群がるメディア
ニューズウィーク日本版 / 2016年2月23日 16時0分
大統領選予備選の開幕戦とも言えるアイオワ、ニューハンプシャー、サウスカロライナの3州は、ここで実力を発揮できなかった候補がドロップアウトする「足切り」としても機能する。特にニューハンプシャー州の予備選は特徴的なため、共和党が重視している。
ニューハンプシャーのモットーは、「Live Free or Die(自由に生きる。さもなくば、死を)」。住民は権威を嫌い、自分の意見を貫くことに誇りを抱く。そのためか、有権者の40%が自称「無所属」で、投票当日まで投票する候補を決めない有権者が多いことで知られる。また、この州の予備選は、有権者がどちらの党の予備選に投票してもいい「open」システムなので、事前に両党あわせて複数のイベントに参加して候補を比較する住民が多い。
政治家が有権者に接するイベントで代表的なのが、「タウンホール・ミーティング」と「ラリー」だ。
【参考記事】「ブッシュ王朝」を拒否した米世論2つの感情
タウンホール・ミーティングはもともと「市役所(タウンホール)」で行われる公開集会のことで、選挙では「政治家が市民と対話する公開の集会」という意味で使われている。公立学校の体育館などを利用することが多く、参加者は数十人から200~300人程度の少数に限定される。質疑応答や写真を一緒に撮影する機会もある。
ニューハンプシャーでのタウンホール・ミーティングに最も力を入れたのは、オハイオ州知事のジョン・ケーシックで、なんと106回も行ったという。
対照的なのがドナルド・トランプだ。彼がニューハンプシャーで行ったタウンホール・ミーティングは、候補者の中でもっとも少ない8回で、そのかわりに数千人規模の大集会「ラリー」を11回も開いている。ケーシックは選挙前夜と当日以外には一度もラリーは開いていない。
共和党のニューハンプシャー予備選の結果は、1位は世論調査で予想されていたとおりトランプだったが、2位は、直前まで確実だと見られていたマルコ・ルビオではなく、ダークホースのケーシックだった。この善戦で、ケーシックは突然メディアや共和党エリートから注目された。
トランプのラリーでは、参加者が盛んにトランプの画像、映像を収めようとカメラを構えている(筆者撮影)
両陣営の戦略の違いは、20世紀後半のアメリカの国民性と、インターネット時代の国民性の違いも象徴している。
インターネット時代の群集心理を最大限に活用しているのがトランプだ。彼は、移民、女性、イスラム教徒、ライバルなどへの暴言を繰り返すが、これは彼自身の意見を反映しているだけでなく、資金を効果的に使うための戦略でもある。
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