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「ホームレス」を生み出さない社会を目指して

ニューズウィーク日本版 / 2016年2月25日 15時42分

ホムパト活動の様子。段ボールで囲ったスペースで休むホームレスの人に食事を差し入れている。

 どうしたら自尊心を傷つけることなく皆さんを手助けできるだろうと考えて、そこからホームレスについて自分なりに調べていったんです。すると、大阪市内だけでひどいときは年間213人も路上で凍死や餓死しているという。また、ホームレスの人は貧困家庭に育って、勉強したくてもできない環境にあった人が多いんですね。「もっと勉強していたらいい生活が送れたんじゃないか」「路上生活をしているのは自業自得じゃないか」という思いも少しあったのですが、それも偏見だったと気づかされました。家庭環境が複雑な人、児童養護施設や一人親世帯で育った人も多くて、そういう人は頼れる人が世間にいないから、いったん失業したらホームレス状態になりやすいということも知りました。*

ホームレス襲撃を防ぐため同世代への啓発に励むが...

 しかも、ホームレスの人の多くは、土木や建設業など危険できつい日雇い労働に従事していた経験を持っています。危険な仕事は誰かがやらなきゃいけないけど、会社側は労災補償のリスクを恐れて非正規雇用になりがちなんですね。自分の生活はそういう人たちの労働の犠牲の上で成り立っている部分もあると、その時初めて社会の構造のゆがみにも気づかされました。

 もう1つ、自分と同世代の中高生がホームレスの人を襲撃する事件が相次いで起きたことにもショックを受けました。寝ている人の眼球をナイフで刺したり、格闘ゲームの技をかけ続けて殺してしまったり。しかも犯人の少年には「ホームレスは社会のごみだ。俺たちはごみ掃除をしただけだ」といった供述が残っていたりするんです。

 こうした事実を知らなかったということは、ホームレスの人たちに関心がなかったということだし、自分の中に少年たちと同じような差別意識が潜んでいたことを突き付けられたようで無性に恥ずかしくなりました。でも、私は問題を知る機会があったので、ホームレスの人に対する偏見をなくすことができた。それで友だちや同世代にもホームレス問題を知ってもらおうと、具体的な取り組みを始めたわけです。

 中学・高校の全校集会のスピーチや新聞の発行といった場を通じて、ホームレスは社会のひずみが生む現象であること、路上生活者がいかに過酷な環境に置かれているかなどを訴えました。でも、みんなには届かなくて「そうはいっても自業自得やん」と言い返されてしまう。ことの本質をうまく伝えきれないもどかしさをずっと抱えていました。

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