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「解決策を100個考えなさい」とティナ・シーリグは言った

ニューズウィーク日本版 / 2016年2月26日 14時48分

 この課題を通じて、受講生が発見したことがあります。いちばん面白いアイデアは、もうアイデアが出尽くしたと思った後に出てくる、ということです。たとえば、パートナーのいびきを解決する方法としては、当たり前の案が出尽くした後に、大きないびきを癒しの音楽に変換するフェイスマスクをつくる、という画期的なアイデアが出てきました。家庭の省エネ問題に取り組んでいたチームは、エネルギーの消費量に応じた音楽をかける案を思いつきました。エネルギーの消費量が少なく、家庭が「ハッピー」であれば、楽しい曲がかかるので、いちいちモニターで消費量をチェックする必要はありません。逆に消費量が多いときは、「アンハッピー」な曲で教えてくれます。

 オンライン講座では、インスピレーションを高めてもらおうと、ジョシュ・グローバンやジェイソン・ムラーズ、リンキン・パークのマイク・シノダら、ワーナー・ブラザース所属の有名アーティストのインタビュー動画も配信しました。共通のテーマとして、曲づくりの過程と、完成した楽曲をファンに届ける過程で、どんな苦労があるかを話してもらいました。彼らの曲は、細部まで作り込まれています。何度となく曲や詞を書き直し、何か月もかけて制作されているのです。

 ジョシュ・グローバンは、こう言っています。「思いどおりの曲ができると今日は良い日だ、と思う。でも、思いもかけない良い曲ができたりすると、今日は最高だと思うんだ」。ほんとうに革新的なものをつくろうと何時間も集中し、壁を乗り越えたからこそ、そうしたことが起きるのだと、ジョシュは知っています。ツアー中は、毎回二時間の公演を最高のものにすることに集中し、時間も心もそれに捧げる、とも語っています。

 スタンフォードでも、学生自身が考える限界を乗り越えるような課題を出して、チームで取り組んでもらっています。まず、三週間かけて一〇〇個のアイデアを出し、一番気に入ったものを選んでもらいます。プロトタイプをつくり、それに対する意見や感想をユーザーから集め、気づいたことを授業で発表してもらいます。その後で、もう一度、最初からやり直すよう命じるのです。

 学生の表情がすべてを物語っています。ショックと苛立ちを隠せません。この期に及んで元に戻れというのは、罰を与えられたように感じるのでしょう。ですが、最初からやり直せるのは、じつはチャンスなのだとわかると、苛立ちは消え、受け入れる気になります。一通り最後まで経験したことで、第一弾のアイデアは出揃っていますし、ユーザーからの貴重なフィードバックも手元にあります。振り出しに戻ることで、さらに良いものにするチャンスを手にしているのです。こうして学生はもう一度、課題に没頭します。そして二週間後には、アイデアもプレゼンテーションも各段に良くなっているのです。

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