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中国著名企業家アカウント強制閉鎖――彼は中国共産党員!

ニューズウィーク日本版 / 2016年2月29日 19時0分

中国のネット空間に出現した「資本翻天派」

 その一派を「資本翻天派」と称する。

 これはどういう意味かというと、企業経営者として大量の資本を集めたのちに、その資本を用いて政権に影響を与え、欧米型の「憲政の道」を歩ませようと世論を導いていく一派のことだ。「翻天」は文字通り「天を翻(ひるがえ)す」=「政権をひっくり返す」という意味である。

 不動産会社社長である任志強氏は、まさにこの「資本翻天派」の一人だと、政府寄りのメディアは断罪している。

 もし任志強氏が「資本翻天派」であるなら、それはそれで歓迎すべきだろう。

 しかし、もう一つの見方ができる。

 党に留まって党を批判するのは、中国共産党の本来あるべき姿を党員として求めているからであり、こういう人こそ、本当に党を愛し国を愛しているのではないかという見方だ。党規約や憲法に「人民のために服務」とか「人民こそが主人公」などと書いているが、それがいかに「空々しいスローガン」であるか、真の良心を持った党員としての彼の叫びではないだろうか。

 党内で叫べば、必ず握りつぶされるので、新メディアという媒体を通して8900万人におよぶ中国共産党員に発信する。「三つの代表」によって資本家に権利を与えたのは、ほかならぬ党であるということを逆手に取っているのだ。

 彼の主張は「中国共産党とは何か」という、最も根本的な問いでもある。

 党籍をはく奪されるというインパクトも含めて、彼は中国という国と勝負しているのだと筆者には見える。

 任志強氏の反骨精神を応援したい。

[執筆者]
遠藤 誉

1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など著書多数。近著に『毛沢東 日本軍と共謀した男』(新潮新書)

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

≪この筆者の記事一覧はこちら≫

遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)


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