トランプ勝利で深まる、共和党「崩壊の危機」
ニューズウィーク日本版 / 2016年3月2日 16時10分
予備選最大のヤマ場「スーパーチューズデー」の結果、民主党はヒラリー・クリントン候補が勝利へ向けて大きく歩を進めた。ヒラリーの勝利演説は、本選を意識した威風堂々としたもので、すでに選挙戦のターゲットを「対共和党」に向けてきている。
一方で、対する共和党は混迷の中にある。いや「崩壊の危機」と言ってもいい。
ドナルド・トランプ候補が多くの州で勝利したということが問題なのではない。この時点では、2位以下の候補も代議員数を獲得できるので、代議員数ではまだ他の候補も追撃可能だし、そもそも今回の「トランプの勝ち方」は政界やメディアの関係者にとっては「想定内」の範囲だったからだ。
問題は、他の候補の動向だ。
まず、テッド・クルーズ候補だが、地元テキサスでは「仮に負けたら撤退」と言われていたが、フタを開けてみれば圧勝だった。しかも隣のオクラホマでも勝っていて、これで緒戦のアイオワを入れると3州で1位になった。この結果を受けてクルーズは、テキサスでの勝利集会で「反トランプ連合の結集軸は自分しかあり得ない」と胸を張った。
【参考記事】「トランプ降ろし」の仰天秘策も吹き飛ぶ、ルビオとクルーズのつばぜりあい
一方で、保守本流の期待を受けていたマルコ・ルビオ候補は、善戦が予想されていたバージニアで勝てず、マサチューセッツでも票が伸びずに3位に終わった。では「ボロ負け」かというと、決してそうではなく、「穏健保守の票が中道派のケーシック候補に流れた」ための後退だという立派な説明がついている。さらにミネソタでは1位になり、これで「本命のくせに、まだ1州も勝っていない」という批判も免れることになった。
つまり、両候補とも「トランプ追撃に必要な勢いは得られてないが、かといって撤退するような状況にもない」。
さらにオハイオ州知事のケーシックは、3月15日の地元オハイオの予備選までは歯を食いしばっても選挙戦を続けると見られていたが、今回のマサチューセッツ(2位)などでの善戦を受けて、「4位なりの勢い」をつけている。
以上のように、「反トランプ連合」が結集できる見通しは、スーパーチューズデー終了時点では見えてきていない。スーパーチューズデーが「以降実施の予備選では勝者総取り(代議員数)」になる前の最後の段階で「候補を絞り込む」のが目的であるなら、共和党はその「絞り込み」には完全に失敗した。
このままでは、共和党内に「全国レベルでは反トランプが53%(Fox News)」いるにもかかわらず、共和党はトランプの対抗馬を一本化できないまま、共和党は今後「勝者総取り」でトランプが代議員数をどんどん上乗せしていくのを「指をくわえて見ている」しかない。
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