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自治の精神で育む都市のフロンティア

ニューズウィーク日本版 / 2016年3月18日 6時3分

 そして目下の中核業務と言えるのは、エリア全ての関係者をつなぐオフライン・オンラインのコミュニケーションツールを作ることだ。この2年間、ヴァン・リエット氏とホーグランド氏は、「Self made future」プロジェクトを進めている。ともにNDSMの未来を描くためのオープンなディスカッションだ。

 オフラインのミーティングは週1回。『エリアの将来について話したければ、毎週木曜日の4時に赤いコンテナに集まる』という習慣は、コミュニティ内に完全に定着した。ディスカッションの結果は「Work on the Wharf, Laboratory NDSM-wharf:future vision 2014-2025」として出版されている。

「天気がよければ外で、悪ければ屋内で。参加したい人なら誰でも歓迎です。ここに入居しているアーティストや大企業はもちろんですが、アムステルダム市、地域の住民、ただの通りがかり、いろんな人がやってくる。だから10人しか来ない週もあれば40人を集める週もあります」(ホーグランド氏)

様々なテキスタイルを扱う服飾系アーティストたち。

NDSMを歩くと、まるで工場の中に街があるかのように思えてくる。こちらは入居するフルート職人マーティン・フィサー氏。金管楽器全般を扱っている。

(左)左)NDSM-werf財団 ソーシャル・イノベーター/ファシリテーターでUrban Tribesコ・ファウンダーのエリーン・ヴァン・リエット、右)NDSM-werf財団 ディレクター/コ・ファウンダーのアン・マリー・ホーグランド(右)NDSM-werf財団事務所の裏に設けられたミーティングスペース。対岸の景色を眺めながらの会議は気持ちがリフレッシュされそうだ。

コミュニティでは、すべての情報を共有することが大切

 オンラインコミュニティも議論の場だ。オフラインのミーティングの内容は全てオンラインにアップロードされ、さらに意見交換。

「面と向かって言いにくい感情的なことも、オンラインでは簡単です。去年、NDSMの象徴というべきクレーンのリノベーションが決まったときは『取り壊しになるのではないか』と不安をもらす投稿が増えました。オンラインは、人々の気持ちのバロメーターのような機能を果たしています」(ヴァン・リエット氏)

 ヴァン・リエット氏とホーグランド氏はコミュニティのファシリテート役だ。人と人、企業をつなぎ、問題提起し、全員の意見をまとめ、議論を次の段階へと導いていく。物語や将来のビジョンのみならず、そこではすべての情報を共有することが不可欠だ。

 コストをどうシェアするか。実現できるか。やっていいこと、やめたほうがいいこと、かつてうまくいかなかったこと、そのプロセスのなかで、コミュニティの絆は太く強くなり、自治の精神が醸成されていく。まるでNDSMが1つのトライブ(部族)であるかのように。

敷地面積: 約10万㎡
入居者:280人(クリエイター及び企業合計)
http://www.ndsm.nl

コンサルティング(ワークスタイル):自社
インテリア設計:Kintetic North Foundation(Art City 部分の構造)
建築設計:Kinetic North Foundation(Art City 部分)

WORKSIGHT 07(2015.4)より

*werfはオランダ語で「埠頭、波止場、桟橋」といった意味

※当記事はWORKSIGHTの提供記事です




WORKSIGHT


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