テロリストに完敗したベルギー治安当局
ニューズウィーク日本版 / 2016年3月23日 17時33分
【参考記事】ベルギー「テロリストの温床」の街
ベルギーの治安当局は対策能力そのものが劣っているのではなく、最大の問題は要員不足だ、という意見もある。人手不足のために、地元ベルギー出身者やシリアで過激派に加わった後に帰国したイスラム過激派を十分に取り締まれずにいるとバークは言う。
【参考記事】「シリア帰り」の若者が欧州を脅かす
「ベルギーで今回のようなテロを実行しようというイスラム過激派ネットワークによる動きは少なくとも1年前から活発化しており、危険性は以前から指摘されていた」としたうえで、バークは次のように述べた。「ベルギーの治安当局で働く職員には非常に優秀な人材がいるが、人員不足はいかんともしがたい。数千人規模のテロリストに対し、テロ対策要員数百人、というのでは話にならない」
一方で、ベルギーが高レベルの厳戒態勢をとっていたさなかに国際空港や地下鉄の駅でテロが起きたことは、治安当局のテロ対策能力にも深刻な懸念を投げかけた。
イギリスに本社を置くシンクタンク英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)で国際安全研究のディレクター、ラファエロ・パンツッチは、新たなテロを防げなかったという事実からも、ベルギーのテロ対策には欠陥があったとしたうえで、次のように述べた。
パキスタンのセキュリティーチェックは駐車場から
パンツッチによると、セキュリティーチェックの方法は国によって様々だ。例えばパキスタンでは、空港の駐車場に車をチェックする係がいる。つまり、セキュリティーチェックは空港から離れた場所から始まる。中国では、空港の建物を出入りするドアで警備員がセキュリティーチェックを行う。空港のゲートでセキュリティーチェックを行う国もある。「それぞれの国が、指標とする脅威レベルに応じて異なるチェック体制を敷いている」
電車などの駅はその性質上これまでもテロの標的になりやすいとされてきたが、大規模な警備体制が敷かれる空港のような重要施設でもテロ攻撃が可能であったことに、ラファエロも驚きを隠さない。「実行犯にとって、ブリュッセルの空港は無防備とで攻撃しやすいと考えられていた事実をうかがわせる」
ベルギーの連邦検察局は、22日の朝にブリュッセル空港内にいた二人の自爆テロ犯と共犯者一人の写真を公開したが、重大な疑問に対する答えは明らかにされていない。イスラム過激派ネットワークはアブデスラム容疑者の逮捕が引き金となって、同容疑者が4カ月間にわたる逃亡中に新たに計画してきたテロ攻撃を、逮捕からわずか4日後というタイミングで実行したのか。それとも、ベルギー当局がアブデスラム容疑者の拘束に躍起になっている隙を見計らって実行された、別のグループによるテロ攻撃なのか。
「これが(アブでスラムの逮捕後)最後のチャンスだと実行された仲間によるテロ攻撃なのか、それとも新たなテロ攻撃の序章にすぎないのか。いずれの場合でも、国際社会は非常に深刻な脅威に直面している」
当面、最も警戒すべきは、容疑者一人が逃走中というベルギーだろう。
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ジャック・ムーア
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