【再録】念願のカダフィ単独取材、私は砂漠の町へ飛んだ
ニューズウィーク日本版 / 2016年3月24日 18時32分
深夜になってからボディーチェックを受け、カメラに爆発物が仕掛けられていないか調べられた。案内された部屋に入ると、民族衣装に赤い帽子の「彼」が座っていた。そばには通訳が1人。カダフィは立ち上がり、私と握手した。
世界中から誤解されている
私が道中の話をすると、カダフィはにんまりと笑った。そして、米政府を揺るがしていたホワイトウォーター事件のことを尋ね、事件はビル・クリントン大統領を失脚させたいCIA(米中央情報局)の陰謀ではないのかと言った。
私のたどたどしい説明を聞くと、カダフィは椅子にもたれ、しばらく熟考した。インタビューの途中で何度もそうしていたが、沈黙の邪魔をしてはいけない気がした。
クリントンと自分は似ている、とカダフィは言いだした。誤解の霧に隔てられているが、2人は心の友なんだ、と。
そんなとりとめもない話の合間に、怒りを爆発させることもあった。86年に米軍がトリポリを空爆したときに幼い娘が殺されたと話し、復讐したいと声を荒らげた。だが、88年のパンナム機爆破事件への関与は否定した。
2時間の会見が終わりかけたころ、カダフィは詩を書くのが好きだと言った。まぶたが重そうで、疲労が感じられた。自分は世界中から誤解されている――心の底からそう信じているようにみえた。
帰り際、カダフィの政治理論をまとめたサイン入りの書物を渡された。私と2人で撮った写真は、翌日の全国紙に掲載された。
私がお礼を述べると、カダフィはまたいつでも来なさいと言ってから、こうつけ加えた。「クリントンに伝えてくれ。CIAに追われたら、いつでも来いと」。私は必ず伝えると約束した。
[筆者]
デービッド・ケリー David Kelly
96年までカイロ在住。00年よりロサンゼルス・タイムズ紙記者。イエメンの米駆逐艦爆破事件やサウジアラビアの自爆テロなども精力的に取材
※この記者によるインタビュー記事はこちら:【再録】生前のカダフィは「国民に愛されている」と言っていた
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[2006.2. 1号掲載]
デービッド・ケリー(元カイロ特派員)
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