【再録】ウィル・アイ・アム「犯罪と暴力を歌ったことがないのが誇り」
ニューズウィーク日本版 / 2016年4月1日 15時35分
――ブラック・アイド・ピーズの新しいアルバムは『ザ・ビギニング』。前作は『ジ・エンド』。順番が逆では?
終わりがあれば、必ず新しい始まりがある。
――何が終わったのか。
レコード産業の在り方すべて。今はまったく新しいテクノロジーの時代が始まっている。
【参考記事】NY音楽シーンの熱気を伝える、撮影者と被写体の信頼感
――でも新しいアルバムは、2ライブ・クルーの歌詞や映画『ダーティー・ダンシング』のリフなど80年代が満載だ。
今あるものはすべて80年代に始まった。コンピューターもハイビジョンテレビもインターネットも。一方で、今の俺たちはまだまだ子供だと分かる。自分ではどんなに進んだつもりでも、ほんの始まりにすぎない。
――あなたはサウンドトラックやCMから音楽活動を始めた。その経験が、マルチに活躍している今の土台になっているのか。
ニベアのCMで母さんの住宅ローンを払った。ドクターペッパーのCMで母さんに新しい家を買った。30秒の音楽が72分の音楽より儲かった。ソロの有名アーティストでも、レコード契約でははした金しかもらえない。広告は儲かる。それが音楽ビジネスだと分かっていたんだ。
――メディアへの露出が多過ぎて心配にならないか。
メディアを利用しないと自分を売り込めない奴なら、露出過剰に陥るのを心配したほうがいい。でも、メディアでの露出以上に創造力を発揮できるのなら、問題ない。
――初めの頃はあなたの折衷的なヒップホップに驚かされた。
スラム街で生まれて、生活保護で育った俺は、いつホームレスになってもおかしくなかった。そんな人生を変えたかった。ギャングではなくMCハマーみたいな格好をしたかった。デ・ラ・ソウルみたいになりたかった。ア・トライブ・コールド・クエストみたいなサウンドをやりたかった。牢屋行きが決まっているスラム街の若者にはなりたくなかった。
――あなたのサウンドはハードさに欠けると言われてきた。
犯罪と暴力は一番再現しやすい感情だ。俺はそれを歌ったことはないし、そのことに誇りを持っている。アフリカ系アメリカ人とスラムのコミュニティーを後戻りさせるようなサウンドでなくても成功できた。
――そう言うあなたが、昨年9月のMTVビデオ・ミュージック・アワーズに黒いフェースペイントで登場して批判された。
今はツイッターという素晴らしい場所があって、分かっていない奴らが、黒人の男が顔を黒く塗ったのを見てつぶやく。「黒人の立場を1000年、後戻りさせた」とかね。
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