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熊本地震が政策の流れ変える、同日選見送り・消費増税延期の予想

ニューズウィーク日本版 / 2016年4月25日 20時12分

 与野党対決の構図となった衆院北海道5区補欠選挙は、自民党が勝利した。しかし、安倍晋三首相が衆参同日選を決断するかどうかの判断材料としての意味合いは薄れ、むしろ衆院解散は見送りのムードが強い。熊本地震が政権戦略のシナリオ修正を迫る現状は、2017年4月に予定している消費税率10%への引き上げも難しくしそうだ。

 今となっては地震一色だ――。今月14日に発生した震度7の地震から10日余。熊本地震への対応が、安倍首相の政権戦略に修正を迫っている。2014年12月の第3次安倍内閣発足後、初めての国政選挙となった衆院補選の最中に、安倍首相は今国会で16年度補正予算を成立させるよう、麻生太郎財務相に指示した。

 当初は、衆参同日選に踏み切るかどうかの判断材料になるとみられた補選。だが、そうした見方は今では少ない。

 政策研究大学院大学の竹中治堅教授は「安倍首相が衆院解散に踏み切れば、非改選の参院議員だけが国会に残る。閣僚自らも、自身の選挙を含めた政務に追われ、万全の態勢で震災対応に臨むのは難しい」と指摘。「補選結果とは無関係に、首相は衆院解散を見送るだろう」とみる。

 2017年4月の消費税率10%への増税判断にも影響が及びそうだ。

 熊本地震で、ソニー などの大手企業が、同県や近隣の工場の操業停止に追い込まれ、余震を繰り返す現状から、生産がストップした状態が予想以上に長引く可能性もある。

 生産活動の停滞は、国内総生産(GDP)に直結するだけでなく、株価下落を通じて企業や個人のマインドを悪化させかねない。「今秋に2次補正を編成し、所得税減税や給付金などもセットにした対策パッケージで相殺は可能」(別の政府関係者)との声とは裏腹に、焦点は、安倍首相がいつ、どこまで増税を延期するかに移りつつある。

 一方で、財政運営に与える影響も懸念される。

 増税を延期した場合の影響について、慶應義塾大学の土居丈朗教授は「基礎的財政収支を2020年度に黒字化する目標達成は『絶望的』になり、無秩序な予算編成が繰り返されかねない」と警鐘を鳴らす。

 (山口貴也 編集:田巻一彦)


 
 [東京 25日 ロイター]


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