バングラデシュ唯一のLGBT誌エディター、なたで殺害
ニューズウィーク日本版 / 2016年4月26日 16時3分
バングラデシュで発行されている初のLGBT(性的少数者)誌「ループバーン」の編集者ともう1人の男性が4月25日、首都ダッカで殺害された。
殺害された編集者のズルハズ・マナン(35歳)は、現地の米大使館内にある米国際開発庁(USAID)の職員でもあった。もう1人の犠牲者はタナイ・モジュムダール(通称トノイ)だとバングラデシュのメディアは報じている。2人は同性愛者であることを公表し、LGBTへの差別やバングラデシュが抱える諸問題に対する意識を高めようと、仲間と共にループバーン誌を立ち上げた。バングラデシュでは、同性愛は刑罰の対象になり得る。
ダッカ・トリビューン紙の報道によれば、宅配業者を名乗る約6人の男たちがダッカのカラバガン地区にある部屋に、午後5時ごろ侵入。男たちはなたを振るってマナンとモジュムダールを殺害した。ほかにも男性2人が大ケガを負っている。
親愛なる友人だった
バングラデシュでは、世俗派や無神論者のライターを標的とした暴行・殺人事件が続発している。この事件の2日前には、英語を教える大学教授が「無神論を広げた」としてイスラム過激派に刺し殺されており、ISIS(自称「イスラム国」、別名ISIL)が犯行声明を出している。
バーニキャット駐バングラデシュ米大使4月25日付けのFacebookへの投稿で、「今日、マナンともう1人の若い男性が残忍な手口で殺害されたことに大きな衝撃を受けている」と書いた。
「米大使館で共に働く幸運に恵まれたわれわれにとって、ズルハズは同僚以上の存在だった。親愛なる友人だった」と大使は述べている。「犠牲者の方々に祈りを捧げたい。われわれは、このような無分別な暴力行為を断じて許さない。今回の殺人事件に関与する犯人たちの検挙をバングラデシュ政府に強く要請する」
米国務省のジョン・カービー報道官も4月25日の記者会見でこう語った。「大使館ファミリーの大切なメンバーだったズルハズへの蛮行に、激しい憤りを覚える」
「犯行は言語道断、弁解の余地はない」とカービーは述べ、米政府は今回の殺人事件に関し、改めて声明を発表すると付け加えた。
バングラデシュでは昨年、世俗派・無神論派のブロガーや出版人が5人殺害されている。うち1人はバングラデシュ系アメリカ人のライター、アビジット・ロイだ。
またBBCによると、バングラデシュで「最も有名な」ブロガーの1人であるイムラン・サーカーのもとには4月24日、殺害予告の電話がかかってきたという。今月6日には、無神論のブロガーで法学部学生だったナジムディン・サマド(28歳)がジャガナート大学付近で殺害されている。
ルーシー・ウェストコット
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