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「ネット言論のダークサイド」を計算機で解析する ── データ分析による報道の技術とその再現性 ──

ニューズウィーク日本版 / 2016年5月10日 20時8分

ブロックと削除の違い
 記事がサイトに表示されない場合、それはガイドラインに沿ってブロックされたか、削除されたのかどちらかとなります。今回の解析では、データとしては残っているが、内容がガイドライン違反なので非表示とされたコメント、すなわちブロックされたコメントをその記事に対する煽り・嫌がらせとしてカウントしています。



 逆にデータに残っていない(したがって今回利用されていない)削除の対象となったコメントは「ブロックされたコメントへの返信」「単純なスパム」となっています。

記事のデータベース

 コメントは記事に対して書き込まれます。したがって、記事が誰によって書かれたのか、どのような内容だったのかということを合わせて解析するためには記事のデータベースが必要です。ガーディアン社の記事データベースは以下のようなものです:

・オンライン版の記事総数はおよそ200万
・Amazon Web ServiceのRedshiftに格納
・このデータベースは公開APIに接続されていて、外部の人もプログラムから検索をかけることが可能

Amazon Web Serviceとは何か?
またここでもAmazonが出てきました。最近のプログラマは空気のように使っている技術ですが、それ以外の人にとっては「なんで通販会社が新聞社のデータ解析に関係あるの?」ということになりかねないので、ここで簡単に説明しておきます。

 Amazonは本の通信販売の会社として始まりましたが、成長の過程で、その大量のオーダーを裁くために無数のサーバーを含む巨大なシステムを構築しました。そこを維持するためには、ハードウェア・ソフトウェア両面の様々なノウハウが必要なのですが、先見の明のあったAmazon社の社長は、そのノウハウをベースに構築された高度な計算機システムを、外部の人に時間貸しという形で提供するビジネスを思いつきました。それがAmazon Web Service (AWS)と呼ばれるサービスです。これを解説し始めると本1冊以上の分量になってしまうので詳細は割愛しますが、企業はこれを利用することにより、自社内にサーバーを持って、データベースを構築して、バックアップを取って、電源を適切に管理して...という作業を外部化することができます。しかもありとあらゆるものが仮想化という技術をベースに抽象化されていますので、まるでソフトウェアを実行するように新しいサーバーを構築し、それをいらなくなったらコマンド一つで捨てる、ということが行えます。いわゆるビッグデータ(私はこの言葉の定義が非常に曖昧であるため、あまり好きではありませんが...)を解析するような場合、必要な量だけのストレージ、つまりデータの置き場を用意し、必要な数だけの計算機を時間単位で借りて一気に解析する、ということが可能です。

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