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トルコから名誉棄損罪で訴えられてわかったドイツの人権レベルの低さ

ニューズウィーク日本版 / 2016年4月28日 19時30分



 欧州連合(EU)全体でも名誉棄損罪は珍しくない。EU(欧州連合)に加盟する28カ国のうち、23カ国が何らかの名誉棄損罪を法で定めている。王室に対する侮辱に過剰な刑罰を科している国が多いのも深刻で、スウェーデンでは6年以下の実刑になる可能性がある。国家元首に対する侮辱にも似たような刑罰が適用される。

世界に人権を説いてきたのに

 ヨーロッパはこの状況を大いに恥じるべきだ。米国やイギリス、多くのアフリカ諸国など世界の大多数の国では名誉棄損に刑罰を科していない。EUは従来からトルコのような人権後進国で人権擁護を説き、世界の先頭に立って基準を築こうとしてきた。それなのに、エルドアンの司法の乱発を止められないどころかEUの道徳的威信を傷つけられて、ヨーロッパには不穏な空気が流れている。

【参考記事】タイム誌「今年の人」に選ばれたメルケル独首相の挑戦

 以前から、欧州安全保障協力機構(OSCE)や国連(U.N.)などの国際機関は名誉棄損罪などの法律を廃止するよう訴えてきた。名誉棄損で実刑や逮捕歴を課されることになれば自己検閲につながるだけでなく、欧州内での公開討論や開かれた民主主義の領域を狭め、報道の自由も守れなくなるだろう。

 改革の機運は高まりつつある。メルケルがコメディアンのヤン・ベーマーマンに対する司法手続き開始を要因したのを受けて、欧州議会の市民的自由・司法・内務委員会(LIBE)議長は次のように発言した。「名誉棄損罪は欧州の基本的な権利の阻害要因になっている」

 今回のエルドアンの攻撃から学べる教訓は、表現の自由のよりどころとなる法律をより厳重に保護すべきだということだ。

ジョー・グランビル(英国際ペンクラブ・ディレクター)


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