日中首脳会談開催に向けて――岸田外相と王毅外相および李克強首相との会談を読み解く
ニューズウィーク日本版 / 2016年5月2日 12時0分
ただ、2015年末の日韓外相会談において慰安婦問題にケリをつけたことが、中国は気に入らなくてたまらない。したがって今では「日中韓」という組み合わせを嫌う。以前は「日中韓」ならば「中韓」が組んで「日本の歴史問題」を糾弾できると喜んでいたが、今は逆転してしまった。北朝鮮の暴走のせいで、韓国のパククネ大統領が、アメリカの言うことを聞くしかなくない所に追い込まれたからだ。いま「日中韓」という組み合わせになれば、「日韓」が組み、中国は歴史問題(特に慰安婦問題)をカードにできなくなる。
このように、北朝鮮の暴走が中国の「歴史カード」の威力に微妙な影響を与えているのは、なんとも興味深いサイクルである。
日中首脳会談が持たれることはもちろん悪いことではなく、両国関係が改善されるのは歓迎すべきだろう。
ただし、歴史を正視しなければならないのは中国の方で、中国共産党が日本軍と共謀して強大化し、その結果、現在の中国、すなわち中華人民共和国が誕生した事実を忘れてはならない。
中国がこの真実を見る勇気を持たない限り、中国国内における言論弾圧が消えることはなく、日中両国民に真の(対等な)友好と幸せをもたらすこともないだろう。いま日中の良好な関係を希求するのは、いかなる必要性に基づいているのかを、正直にみつめる良心を互いに持ちたい。
[執筆者]
遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など著書多数。近著に『毛沢東 日本軍と共謀した男』(新潮新書)
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。
遠藤 誉(東京福祉大学国際交流センター長)
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