サッカー界でも吹き荒れる中国「爆買い」の不都合な真実
ニューズウィーク日本版 / 2016年5月6日 14時27分
中国政府は、2020年までにスポーツ産業の規模を5兆元(約82兆円)にするとの計画を発表している。実際、ネット企業やテレビ局が版権を奪い合うコンテンツバブルが続くなか、中国スーパーリーグの放映権料は5年80億元(約1310億円)で契約されるなど、サッカーコンテンツの価値も高まってはいる。とはいえ、この放送権料はクラブごとに分配されるわけで、巨額赤字の前には焼け石に水でしかない。しかも他クラブも巨額投資を敢行するなか、"最強"の地位を守るためにはさらなる投資が必要となる可能性も高そうだ。
マンUを抜き、時価総額で世界一のクラブに
赤字まみれの"最強"チームは長続きしないように思えるが、そうとも言い切れないのが中国の面白いところだ。"焼銭モデル"という言葉がある。赤字上等でともかく規模を拡大さえすれば、お金は後から着いてくるという発想だ。
実際、広州恒大タオバオは今年1月に初の新株発行による資金調達を実施したが、発行価格と株式数をかけあわせた時価総額は218億元(約3580億円)に達している。かのマンチェスター・ユナイテッドを超え、サッカークラブとしては世界一の数字だ。日本ではあまり話題とならなかったが、世界ナンバーワン・サッカークラブがアジアに誕生していたというわけだ。
もちろんこの時価総額は数字遊び、バブルにしか過ぎないとも言える。とはいえ中国政府がスポーツ産業振興を唱えるなか、しかも習近平総書記は大のサッカー好きという追い風もあって、このサッカーバブルはそう簡単にはじけないとの見方も有力だ。国際大会で中国クラブと対戦するJリーグのクラブには受難の時代が続きそうだ。
[筆者]
高口康太
ジャーナリスト、翻訳家。1976年生まれ。千葉大学人文社会科学研究科(博士課程)単位取得退学。独自の切り口から中国・新興国を論じるニュースサイト「KINBRICKS NOW」を運営。著書に『なぜ、習近平は激怒したのか――人気漫画家が亡命した理由』(祥伝社)。
高口康太(ジャーナリスト、翻訳家)
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