時差ボケには機内でさようなら
ニューズウィーク日本版 / 2016年5月9日 16時10分
航空輸送の発達で世界のどこにでも比較的短時間で移動できるようになったのは結構なことだが、その「副作用」と言えるのが時差ぼけだ。ぼんやりしたり疲労感のせいで到着初日が台無しになる事態も珍しくない。
時差ぼけは、現地時間と体内時間のずれによって起こる。体内時計を調節するホルモン、メラトニンのサプリメントを服用するといった対処法もあるが、飛行機そのものに「時差ぼけ防止機能」を持たせようという試みも始まっている。
欧州航空機大手エアバスの新型旅客機A350XWBには、さまざまな色の光(1670万通りの組み合わせが可能)で客室内を照らすLED照明が設置されている。到着地の時刻(つまり1日の太陽の光の変化)に合わせた光で乗客の体内時計をだまそうというアイデアだ。
頻繁に長距離路線を利用する人にとってはありがたい機能かもしれない。体内時計のリズムのずれが恒常化すると、身体に長期的な影響が出る可能性がある。心臓病や肥満といった生命にも関わる健康上のリスクを高めることにもなりかねないのだ。
臨床試験などは行われていないものの、ハーバード大学の神経科学者で睡眠障害などを研究するフランク・シアー准教授は、理論的には効果が期待できると語る。「夕方、目に光を照射すれば、体内時計を遅らせることができる。朝であれば、体内時計を進めることになる」
【参考記事】実は結構つらい? ジェット族の意外な現実
ただし、東に向けて移動する場合には十分な効果が得られない可能性もあるとシアーは言う。例えばボストンを夕方6時にたち、8時間のフライトの後にアムステルダムに朝8時に着くとしよう。せっかく照明で夜明けを演出しても、乗客の体内時計は夜中の2時なので、逆に夕焼けだと解釈されてしまう可能性があるのだ。
カタール航空は昨年1月にA350を就航させ、北米路線への投入を進めている。本当に照明による時差ぼけ予防効果なのかどうかは不明だが、乗った人の評価は悪くない。
「すごくいい気分で到着できた」と、旅行ジャーナリストのザック・ホーニッグは言う。彼はクレジットカードなどの特典を使った空の旅を提案しているウェブサイト「ポインツ・ガイ」の編集長も務めている。
ホーニッグはニューヨークからドーハまで12時間かけて飛び、そこからドイツのミュンヘンに向かった。「どちらのフライトでも2~3時間しか眠れなかったのに、ドーハでの乗り換え時間も有効に使えたし、ミュンヘンに着いたときもすぐに仕事に取り掛かれた」と彼は言う。
[2016.2. 9号掲載]
エド・ケーラ
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