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南シナ海仲裁裁判に台湾が横やり、裁定遅延の恐れも

ニューズウィーク日本版 / 2016年5月11日 11時4分

 中国外務省はフィリピンの申し立てによる裁判を受け入れない意向を繰り返し、中国の領土主権を無効とするため、フィリピンが同裁判を利用していると主張。ロイターに対し、「台湾海峡を挟んで両側にいる中国人は皆、先祖の所有地を共に守る責任がある」とファクスで回答した。

 中華民国国際法学会は正式には民間団体だが、台湾当局と近い関係にある。馬英九総統はかつて同学会の代表を務めたことがあり、現在も理事会に名を連ねている。今月20日、馬総統は退任し、1月の選挙で圧勝した民主進歩党(民進党)の蔡英文氏が新総統に就任する。

 馬総統は1月に太平島を訪問し、同島が島であることを改めて強調した。総統の報道官はロイターに対し、中華民国国際法学会による陳述書提出は台湾当局を代表するものではないとしたうえで、同学会が提出した証拠は当局の公的立場と一致すると語った。

 同学会の主張が中国の立場を後押しするかもしれない一方、中国政府は、常設仲裁裁判所が、国際社会における台湾の立場を強化するようないかなる動きに出ることも警戒するだろうと、専門家は指摘する。

 中国当局者はこの問題における同裁判所の管轄権とフィリピンの申し立てをする権利について繰り返し反論し、仲裁手続きへの参加を拒否している。



 中国政府は常設仲裁裁判所への陳述書提出を拒否しているが、同裁判所の発表によれば、判事は中国の公式声明を考慮に入れているという。

 中国政府が同国の一部とみなしている台湾は、どのような形であれ仲裁手続きへの参加を呼びかけられてはいなかった。ベトナムは、常設仲裁裁判所に管轄権があると判断したフィリピンの申し立てを支持し、陳述書を提出している。

 東南アジア研究所(シンガポール)の南シナ海専門家、イアン・ストーリー氏は、判事が台湾の主張を検討することを認めたのは大きな意味があると指摘。

 「判事が、公平であろうと努力していることを示している。中国が参加を拒否しても、台湾が国連に加盟していなくても、あらゆる関係当事者の主張を考慮に入れようと苦心しているのがうかがえる」とストーリー氏は述べた。

 同氏はまた、台湾に「国際的な場所」を与えるのを中国は気に入らないであろう一方で、この問題に関しては「中国は見て見ぬふりをするかもしれない」との見方を示した。

 (Greg Torode記者、J.R. Wu記者 翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)[香港/台北 10日 ロイター]Copyright (C) 2016トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

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