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紫の異端児プリンス、その突然過ぎる旅立ち

ニューズウィーク日本版 / 2016年5月11日 16時0分

 90年代はもっとひどかった。ワーナー・ブラザースとのトラブルで芸名を発音不能な記号に変更し、次々と売りにくいアルバムを発表した。中には『ゴールド・エクスペリエンス』のような傑作もあったが、『カオス・アンド・ディスオーダー』のような失敗作もあった。

 99年からはペイズリーパークに引き籠もり、ネットで予約しないと買えないアルバムを何枚か発表した。この時期には私生活での波乱もあった。15歳も若い妻マイテ・ガルシアとの間に生まれた幼い息子が、まれな遺伝子疾患で死去したのだ。

 しかし、不死身のプリンスは復活した。04年にはアルバム『ミュージコロジー』を引っさげてツアーを再開している。インターネットの普及も、若い世代の新たなファンの獲得を後押しした。スーパーボウルでの名演はもちろん、ミュージックビデオの予告映像や音楽祭での生演奏は、あっという間にネット上で拡散した。最近は本人もツイッターやインスタグラムを使いこなし、ファンに直接、語り掛けていた。

 プリンスは最後まで精力的だった。昨年末には39枚目のスタジオ制作アルバム『ヒットアンドラン・フェイズ・ツー』を、音楽配信サービスのタイダルを通じてリリースした。今年に入ってからも、バンドなしの弾き語りツアーを続けていて、ほんの1週間前には亡きデビッド・ボウイの「ヒーローズ」をカバーしていた。

【参考記事】デビッド・ボウイ、最後のアルバムに刻んだ死にざま

 そして死の5日前。珍しく自宅ペイズリーパークのダンスパーティーに顔を出したプリンスはインフルエンザ入院説を軽く笑い飛ばし、「お祈りするのは2、3日待ってくれよ」と語ったと伝えられる。

 プリンスよ、安らかに眠れ。パープルの光に包まれて。

[2016.5.10号掲載]
ザック・ションフェルド(本誌記者)


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