トランプも黙らせたイスラム教徒、ロンドン新市長の実力
ニューズウィーク日本版 / 2016年5月11日 18時0分
イングランド各地の工場やサービス業で何とか働き口を見つけ、貧困から抜け出す者もなかにはいたが、イギリスのパキスタン系コミュニティーはいまだに失業率が高く、子どもの学業成績も最低のまま。その多くが、イギリスで最も貧しい地域に暮らしている。
イギリスの政治はよく知られているとおり、名門校出身の上流階級による「同窓生ネットワーク」に牛耳られている。デービッド・キャメロン首相をはじめ、ジョージ・オズボーン財務相、任期満了で退任したロンドン前市長ボリス・ジョンソンもその典型。カーンの対立候補だった保守党のゴールドスミスも家柄や財産、政治的な人脈、メディアやビジネス上のつながりまで申し分のないエリートだった。
【参考記事】「大学前」で決まる超・学歴社会
カーンの当選は、特権に対する実力主義の勝利と映る。政治の包容力が増し、以前より多様な民族的、宗教的、社会経済的バックグラウンドを反映できるようになったサインでもあろう。
パキスタン移民2世がイギリスで政治的重要性の高いポストにつくのは、カーンが初めてではない。キャメロン内閣でイギリス初のイスラム系女性閣僚に抜擢されたバロネス・サイーダ・ワルシの父もパキスタン移民だ。2015年に実施された総選挙では、10人のパキスタン系イギリス人が国会議員への当選を果たした。
そして今や、バスの運転手だったパキスタン移民の息子がロンドン市長の座を射止めた。西欧で最も影響力のあるイスラム教徒になったのだ。
Parveen Akhtar, Lecturer in Sociology, University of Bradford
This article was originally published on The Conversation. Read the original article.
パルビーン・アクタル(英ブラッドフォード大学社会学講師)
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