謎の「当局者」発言で、中国株式相場が急落
ニューズウィーク日本版 / 2016年5月12日 19時8分
中国共産党の機関紙、人民日報が掲載したある「当局者」の発言が株価急落を招いたとして非難されている。この人物は9日付のインタビューで、中国における過剰な信用拡大は景気後退につながりかねないと述べた。匿名の当局者の発言が金融市場に及ぼすダメージに関して批判が巻き起こっている。
多くの投資家は、記事が中国政府の内部に亀裂が生まれていることを示唆していると受け止めた。第1・四半期の新規の人民元建て融資は急増したが、政府は抑制策をほとんど講じなかった。一方で、複数のインフラ構築計画を発表し、弱含む経済を刺激するための試みだと広く受け止められた。
インタビューに応じた人物は「経済成長の加速を目的に金融を緩和することで、レバレッジが縮小するという幻想を完全に捨てるべきだ」と述べた。
「景気刺激策主導の道に戻れば、懸念が高まり市場は戸惑う。どうしたらいいのか分からなくなるだろう」と加えた。
市場は戸惑わなかった。株式相場はすぐさま下落した。
上海総合指数は3%近く値下がりし、ロイターの試算によると2110億ドルを超える時価総額が吹き飛んだ。
損失を出した一般投資家のDing Ou氏は「これまでの政策と矛盾するため、はじめは(記事が)偽造されたものかと思った」と述べる。「この記事は確実に相場に打撃を与える。以前はかなり前向きだったが、今は悲観的になってきている」と付け加えた。
アイビー・キャピタルのファンドマネジャー、Shen Weizheng氏も同じ意見で「政策当局者の間で大きな亀裂があることを示すもので、投資家を混乱させる」と話す。
人民日報はコメントの要求に応じなかった。
株価を左右したとして人民日報が批判されたのは初めてではない。政府系機関紙は広くこうした批判を浴びている。
上海の同済大学で金融学の教授を務めるShi Jianxun氏は、自身のミニブログで「インタビューが報じられてから株価は100ポイント近く下がり、投資家は大きく痛手を被った。この当局者はどのような責任を負うべきなのか」と投稿した。
2015年5月には人民日報は「上げ相場でもリスクを忘れてはならない」と題する署名入りの社説を掲載し、1日で株価が4%下落した。
最も批判されたのは、長期的な上げ相場は始まったばかりだとの見方を示した15年4月の記事だろう。アナリストらが既に相場の過熱を指摘していたにもかかわらず、記事を受けて個人投資家は資金をつぎ込んだ。相場は2カ月後に急落した。[上海 11日 ロイター]Copyright (C) 2016トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます
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