蔡英文新総統はどう出るか?――米中の圧力と台湾の民意
ニューズウィーク日本版 / 2016年5月17日 17時39分
これにより蔡英文新総統の演説内容は決まるだろう。
これはまさに、彼女の望むところでもあるはずだ。
ところで同調査によれば、「馬総統は信頼できる:28.9%」で「馬総統は信頼できない:53.7%」となっており、それぞれ4月の調査よりも「0.2%増」と「2.0%減」になっている。
この原因は明らかに日本の沖ノ鳥島への干渉事件と、5月7日のWHA参加に関する中国大陸報道への強烈な抗議にあったと見ていいだろう。
日本では沖の鳥島事件を、中国の圧力による反日行動とみなす分析が多いが、そのような単純なものではない。
実は2013年4月に馬英九政権は日本との間で「日台漁業取り決め」を結んだ。尖閣諸島周辺海域における日本と台湾の漁業権について定めた二国間の取り決めだ。これに対して台湾漁民からは「売国締結」として激しい抗議が上がっていた。なぜなら台湾の漁船が乗り入れていい水域は北緯27度より南側と定められているために、尖閣諸島の日本領海はこの取り決めの漁業域に含まれていないからだ。
台湾漁業界からの反発はこんにちまで続いていたため、馬英九氏としては政権最後の段階で、このTMBS民意調査における支持率を、わずかでも高めたいという気持ちがあっただろう。
実際、4月よりも0.2%ではあっても支持率が上がったのは確かで、これを以てピリオドを打ち、5月20日に総統の座を去る。
5月20日夕刻に開催される新総統就任祝賀会には参加しないそうだ。
蔡英文新総統の就任挨拶が楽しみだ。
[執筆者]
遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など著書多数。近著に『毛沢東 日本軍と共謀した男』(新潮新書)
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。
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遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)
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