未婚男性の「不幸」感が突出して高い日本社会
ニューズウィーク日本版 / 2016年5月24日 15時45分
男性の場合、支える目的や情緒安定の場の喪失という意味で、離婚(家族解体)は自殺のきっかけになり得るが、女性は必ずしもそうではないことが示唆されている。女性の場合は、家庭の諸々の束縛から解放されるという点で、離婚は自殺の抑止因になっていることも考えられる。
【参考記事】日本男子「草食化」の背景にある経済格差
いみじくもフランスの社会学者デュルケームは、『自殺論』の中で次のように述べている。「結婚生活は、女子が自分の運命を耐えがたく感じたときでも、その運命を変更することを禁じている。したがって、その規則(筆者注:離婚の抑制)は、女子にとっては、これといった有利さも与えられない一つの拷問なのだ」(宮島喬訳『自殺論』中公文庫〔1985年〕)と。
19世紀のヨーロッパ社会の観察に基づく所見だが、現代の日本でも、結婚生活が女性にとって窮屈なものであることは否めないだろう。
未婚男性の「不幸」感が未婚女性と比較して著しく高いというデータは、日本の家族の意味合いが男女で異なっていることがうかがわれる。それは、著者の過去の記事でこれまでにも指摘していることだが、日本社会の性役割規範(ジェンダー観)がいまだに根強いことの証左に他ならない。
<資料:「第6回・世界価値観調査」(2010~14年)、
厚生労働省「人口動態統計」>
≪筆者の記事の一覧はこちら≫
舞田敏彦(教育社会学者)
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