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【写真特集】中国マネーを絞り取る欧州「悪質」弾丸ツアー

ニューズウィーク日本版 / 2016年5月30日 16時45分

 2003年には約1000万人だった世界の中国人観光客は、14年には1億1000万人以上に急増。歴史遺産が多くて買い物も楽しめるヨーロッパは人気の旅行先だ。パスポートを持つ中国人はまだ10%に満たないから驚異的な増加は今後も続くだろう。

 バスから降りてエッフェル塔の前で自撮りし、すぐ次の場所へ――そんな中国人団体客の姿にパリっ子の私はおかしさと同情を感じていたが、やがて彼らと一緒に旅することを考え始めた。申し込んだのは10日間で2000ユーロのツアー。15年4月、英ヒースロー空港に着いた一行との6カ国の旅が始まった。



 旅の中身はまさに中国流だった。宿泊先は安い郊外のホテルで、食事は中華料理店。地元の人と触れ合うのは高級店で買い物をするか、幹線道路で休憩するときくらい。欧州に関するガイドの知識もお粗末なものだ。

 好奇心から始めたこの計画は、写真による抗議声明へと変わった。サービスの質と有意義な体験を犠牲にして、消費を促す悪質なシステムへの抗議だ。あるツアー客はつぶやいた。「ヨーロッパの印象は? と聞かれたら、『何も』と答えるだろうな」




【DAY 2】ロンドンを離れて
午前はロンドンから約40キロの場所にあるエリザベス女王の公邸、ウィンザー城へ




【DAY 3】パリへ(1)
早朝にユーロスターでパリへ




【DAY 3】パリへ(2)
午後のベルサイユ宮殿見学は1時間も滞在できない



【DAY 4】パリ(1)
午後は百貨店ギャラリー・ラファイエットへ




【DAY 4】パリ(2)
ルーブル美術館の『モナリザ』のそばで自撮り




【DAY 5】パリからディジョンへ
百貨店プランタンで買い物。ルイ・ヴィトンのバッグは中国で倍の値段で転売できる




【DAY 6】スイス(1)
午前にスイス入りし、中部の町インターラーケンで一休み




【DAY 6】スイス(2)
スイス製の腕時計を買ったら、ルツェルンの中華料理店で昼食



【DAY 7】スイスからオーストリアへ(1)
ティトリス山はなぜか中国人をはじめアジア人観光客に大人気だ




【DAY 7】スイスからオーストリアへ(2)
オーストリアのインスブルックは宿泊のみで、翌朝にはイタリアへと出発した




【DAY 8】イタリア
ベネチア観光は3時間だけで、ベネチアンガラスの店を駆け足で見学する




【DAY 9】フィレンツェ
午後にフィレンツェを3時間観光した後、駐車場でバスを待つ一行。昼食を食べた中華料理店で渡された旅行パンフレットを読みふける




【DAY 10】ローマから帰国(1)
早朝にローマ入りし、バチカンも含めて見学。崩れかかったコロッセオ(円形闘技場)と違い、ツアー客一行は長旅にも疲れ知らず




【DAY 10】ローマから帰国(2)
フィウミチーノ空港で、ガイドが預かっていたパスポートを返却する


Photographs by Jeremy Suyker

撮影:ジェレミー・シュイケル
85年生まれ。フランス人ジャーナリスト。独学で写真を学ぶ。2011年よりフリーとなり、内戦後のスリランカや歴史的転換期を迎えたミャンマー(ビルマ)を取材。政情が不安定な国々の社会問題を長期プロジェクトのテーマとしている

<本誌2016年2月16日号掲載>

≪「Picture Power」の記事一覧はこちら≫

ジェレミー・シュイケル

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