「ヒマワリ」の影が覆う台湾新総統の厳しい船出
ニューズウィーク日本版 / 2016年5月31日 16時0分
【参考記事】「人民元」に謝罪させられた台湾アイドル――16歳の少女・周子瑜
謝罪動画で周が見せた力ない表情は、国際社会における台湾の立場の象徴であり、中国への経済的依存の危険性を浮き彫りにしていた。蔡は支持者から、独立路線の強化と併せて、雇用増や経済的繁栄の実現を期待されている。だが、この2つは両立可能なのか?
最近行われた調査によれば、職探しのために台湾を離れるつもりでいる若年層(20~35歳)の割合は60%を超える。これこそ、蔡に突き付けられた難問だ。技術革新支援などで才能の流出を食い止めなければ、蔡は優秀な人材も若者の支持も失うことになる。
【参考記事】中国は反日? 台湾は親日? 熊本地震から考える七面倒くさい話
そんな未来を回避すべく、蔡政権は成長を促進して格差解消に努める一方で、貿易相手の多角化を通じて対中依存度を下げようとするはずだ。
蔡は東南アジア諸国やインドとの経済・文化交流を促進する「新南向政策」を提唱し、環太平洋諸国の貿易協定TPPへの参加、対日貿易の拡大も目指している。とはいえ政策の成果はすぐには出ない。当面の頼みである中国経済は、ある台湾のエコノミストいわく「誰もが危機を想定する」状態だ。
蔡を支えた若者たちは今や、蔡と戦うことも辞さない構えだ。ヒマワリ革命の指導者の1人、林飛帆(リン・フェイファン)は言う。「私たちが手にした結果と約束を再び政権与党がほごにしたら、前よりすごい抗議活動を展開してみせる」
[2016.5.31号掲載]
アナ・ベス・カイム(ジャーナリスト)
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