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モハメド・アリは徴兵忌避者ではない

ニューズウィーク日本版 / 2016年6月7日 18時32分



 今やアメリカ国民のほとんどが誤りだったと認めるベトナム戦争。それに果敢に反対したアリの姿勢が正しかったことは、何よりも歴史が証明している。アメリカは自国を一度も攻撃したことのない小国ベトナムに米軍を派遣し、結果的に5万人以上の米兵が犠牲となった。敗れたアメリカが撤退した後、ベトナムは共産主義政権に統一された。

 当時のベトナム戦争支持者たちは、もしベトナムが共産主義国になれば、周辺のアジア諸国を始め世界中の国々がドミノ倒しのように共産主義国になるという「ドミノ理論」で脅威を煽っていた。だが、現実は違った。それどころか、蓋を開けてみれば当事国のベトナムですら共産主義政策が失敗に終わり、戦争終結からたった12年後には市場経済を導入した。今日では、アメリカにとって有望な貿易相手国だ。

 当時はエリートがこぞってベトナム戦争を擁護し、敗戦後もしばらくその姿勢を変えなかった。一部の超タカ派の政治家は、いまだにあの戦争を擁護している。もしもあの当時、若く口うるさいボクサーの言葉に耳を傾けていたら――救わたであろう命や財産があったことに、思いをはせてほしい。

This article first appeared on the Foundation for Economic Education

トム・ミューレン


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