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伊勢志摩サミットの「配偶者プログラム」はとにかく最悪 - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代

ニューズウィーク日本版 / 2016年6月9日 19時10分

 実は高橋氏は2011年に逝去されており、もしかしたら激務が外交官の生命を奪ったのかもしれず、また2008年の「配偶者プログラム」でも、保守的な前提で企画が動くなかで、高橋氏には人に言えない苦労があったのかもしれません。そう考えると、同氏の名前を挙げて批判した過去のコラム記事に関しては申し訳ない思いもするのです。ですが今度こそ外務省は猛省をして、以降はこのような失態を繰り返さないようにすべきと思います。



 今回の「伊勢志摩配偶者プログラム」は最悪でした。日本国内では「不況の中、観光産業のPRになればと藁をもつかむ思い」があったのは理解できます。ですが、この「グルメと真珠」という組み合わせは、国外から見れば「贅沢な先進国の首脳配偶者が贅沢な観光を楽しんでいる」としか見えないのです。

 国のトップである首脳の配偶者にグルメツアーを提供するのは「華やかで結構」というイメージがあるのかもしれませんが、それではダメです。どうしてダメなのかというと、東京都の舛添知事がファーストクラスやスイートルームを使ったというように、公私混同だからダメというのとは少し違います。それは「格差の象徴」になるからです。

 日本でもサミット反対のデモがないわけではありませんが、多くの場合は安保絡みの反対で、サミットが格差の象徴という厳しい批判があることは、日本では実感できないかもしれません。ですがG7に関して言えば、米欧で行われる際には、必ず格差反対の大きなデモが起こります。例えば昨年ドイツで行われたエマウル城サミットの際には、3万人規模の反対デモが行われ、ミュンヘン市内は大きく混乱しました。

【参考記事】「デジタルデフレ」こそ、世界経済が直面するリスク

 多くの首脳配偶者が参加を見送ったのは、こうした緊張感の中では、とてもではありませんが「真珠とグルメ」などという企画には参加できないからです。そして、そのような批判を受けるようなイベントに関しては、自国の政権に対して批判材料が欲しいメディア以外は、絶対に取り上げないでしょう。

 それではやってもムダなのです。参加した首脳の配偶者3人は喜んでくれたかもしれませんが、せっかくカネをかけて、神経を配って企画しても、各国のメディアは「良かれ」と思って無視したはずです。と言いますか、無視せざるを得ないのです。ということは、結果的に地元の観光産業振興にもならないのです。

 さらに言えば、安倍首相をはじめ、多くの首脳が格差是正のために財政規律を緩めてでも対策を打とうとして討議を続けていた一方で、配偶者には「真珠とグルメ」では、G7本体の論議の足を引っ張っているとすら言えます。

 G7がいつまで続くか分かりませんが、今後もG20やAPECなど日本を舞台とした首脳外交のイベントは何年かに一度は回ってきます。この種の単純で致命的なミスは、とにかくやめていただきたいと思います。

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