LGBTはイスラム過激派の新たな標的か
ニューズウィーク日本版 / 2016年6月14日 17時52分
【参考記事】ISISの支配下には31,000人以上の妊婦がいる
事件後、バラク・オバマ米大統領はホワイトハウスで緊急記者会見を開き、世界各地でLGBTのコミュニティーの権利を祝うゲイ・プライド・パレードが行われる時期に起きたことに触れ、乱射事件は「テロ行為であり、ヘイト行為だ」と強く非難した。
ISISはマティーンが組織でテロ行為を決行したと主張しており、アマックも「アメリカに潜むISISの戦士が、フロリダ州オーランドのゲイが集うナイトクラブでテロ攻撃を行い100人以上を死傷させた」と報じた。
だがマティーンの父親は、マティーンが以前マイアミ市内で男性2人がキスをしているのを見て憤っていたことはあったものの、これまでにイスラム過激派の教義や宗教に関心のあるそぶりを見せたことはないと語った。2011年に離婚した元妻は、「マティーンはよく暴力をふるい、精神的に病んでおり安定していなかった」と話した。
米下院情報特別委員会の有力メンバーであるアダム・シフ下院議員(民主党、カリフォルニア州選出)は、多数の証拠が、今回の事件がISISに触発されたテロ行為であることを示唆していると語る。ISISがラマダン(断食月)の間に攻撃を実施するよう呼び掛けていたことや、マティーンが911へ電話してISISへの忠誠を誓ったことなどだ。ただし同議員は、「この攻撃がISISの指示によるものであるかどうかは、まだ断定できない」と付け加えている。
メディアを通じて命じるバグダディ
マティーンは連邦当局に知られる存在だった。FBIは過去、彼に対して2度の捜査を行っている。2013年には「自分はテロリストたちとつながりがある」と吹聴していたために嫌疑がかけられたが、起訴できるだけの十分な証拠を見つけられなかった。次の2014年には、シリアで自爆テロを実行した最初のアメリカ人であるモネル・モハマド・アブサルハとマティーンにつながりがあるのではないかという疑いで捜査が行われた。
FBIタンパ支局の責任者を務める特別捜査官補佐のロナルド・ホッパーはオーランドで、2014年の捜査に関して記者たちに説明を行った。それによれば、マティーンとアブサルハは2人ともフロリダ州フォートピアース在住だったが、その接触は「最小限」で、「マティーンは実質的な脅威ではない」と当時のFBIは結論づけたという。
ISISの支配地域がイラクとシリアで縮小を続けているにもかかわらず、西側諸国の政府は、暴力的で憎悪に満ちた過激なプロパガンダの影響を封じ込めるのに悪戦苦闘している、と専門家は言う。
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