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「難民受け入れ全面停止」トランプより排他的な共和党

ニューズウィーク日本版 / 2016年6月16日 16時33分

<難民にはオーランド銃乱射容疑者のような危険分子が混じっているから、もっと厳しい審査体制ができるまでは誰一人入れてはいけない──トランプの「イスラム教徒入国禁止」よりさらに排他的な法案に80人以上の共和党議員が結集>

 米南部フロリダ州オーランドで発生した銃乱射事件を受けて、米下院の共和党議員グループが中心となり、直ちに一切の難民受け入れを禁止する法案の提出に動いていることが、フォーリンポリシー誌が入手した資料から明らかになった。その内容は、米大統領選の共和党指名候補の座が確定したドナルド・トランプが提唱した「イスラム教徒の移民受け入れ停止」のさらに上を行く強硬策だ。

【参考記事】不法移民、トランプが強制送還部隊の創設を提唱

 法案の提出を目指しているのは、共和党下院議員のブライアン・バビン(テキサス州選出)の他85名の共和党議員。国土安全保障省が難民審査を再開するまでは難民の認定を禁じるという内容だ。さらに米政府監査院に対して、高齢者や低所得者、障害者向けの医療保険制度やその他の社会保障関連制度を利用している難民について、実態を報告するよう求めている。

アメリカが最優先

 法案への指示を求める文書の中で、バビンは次のように述べた。「この法案は、難民の受け入れが国家安全保障上の脅威にならないことを確証できるまで難民の受け入れを停止することで、アメリカ国民の安全を最優先に守るものだ」

 文書は難民の身元調査が「最小限」で、監視が行き届いていないと批判するなど、大半がトランプの反移民主義を真似た内容だ。

【参考記事】共和党エスタブリッシュメントはなぜ見捨てられたのか

 トランプはここ数日の演説で、「難民の身元調査を行う体制が整っていない」と述べるなど、バラク・オバマ大統領の移民政策を執拗に批判している。だが実際のアメリカの身元調査手続きでは、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)による身元調査を終えてからアメリカの安全情報関連機関の審査を受けるというプロセスを経る必要があり、身元調査だけで2年以上かかる野が現状だ。オバマ政権が目標とするシリア難民の1万人受け入れという数値目標に届いていないのも、そうした煩雑な手続きが大きな壁となっている。それに対し隣国カナダはすでに2万7000人以上のシリア難民を受け入れている。



  しかしバビンは、オーランドのナイトクラブで銃を乱射し49人を殺害したオマル・マティーン容疑者が、犯行前にISIS(自称「イスラム国」、別名ISIL)に忠誠を誓ったと報じられたのを引き合いに出した。マティーンは移民ではなくアメリカ生まれだが(両親はアフガニスタンからの移民)、バビンにとってそんなことはどうでもいい。事件から2日後にはラジオで「アメリカには外からやってきたイスラム過激派が潜んでいる。移民2世も、過激派分子になりつつある」と語った。

銃規制求め議事妨害も

 法案は難民に対して不公平でアメリカの価値観にも反するとして、人権団体から痛烈な批判にさらされている。国際協力団体の英オックスファムで上級政策アドバイザーを務めるノア・ゴットシャルクは、「米議員の一部がオーランドで起きた悲劇を利用して、イスラム教徒、とりわけ紛争や暴力から逃れ、ただ安全な避難場所を求めているだけの亡命希望者や難民に対する恐怖心を煽っている」と批判した。「この法案はアメリカの安全を守るために不要なだけでなく、アメリカらしくない」

 一方、米上院では同日、民主党のクリス・マーフィー上院議員が、共和党議員たちが銃規制強化に同意しない限り、演説をやめない議事妨害(フィリバスター)を行った。

ジョン・ハドソン

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