「セルフ・ダンピング」で苦境に陥るベネズエラの食料輸入事情
ニューズウィーク日本版 / 2016年6月20日 12時28分
これでは国内生産が崩壊するのも当然だ。
さらにひどいことに、政府は国内生産より輸入が有利になるよう規則を変更してきた。
国内の食品産業もやる気が失せるというものだ。政府は何年も前に食料生産に関する統計を公表するのをやめた。だが、産業会議や連盟の声明を見れば(政府はほとんどこれを問題視していないが)、かなりはっきりと実態がわかる。
企業の没収と輸入品へのえこひいきに加え、価格統制によって産業は衰退した。上昇し続けるコストに直面している農家が、政府により制裁を受けた価格で販売しながら生計を立てることなどできない。農家には設備や部品が不足しており、政府が持ち込む人為的に安価に設定された食料と競争するなど不可能なのだ。その上、食料生産はパッケージ産業などの他の産業にも依存しており、これらの産業もまた酷い状況にある。
これら産業を、すばやく、またお金をかけずに復活させることなどできない。ベネズエラ企業は外国のサプライヤーに何十億ドルもの負債がある。これは、輸入を認可してもサプライヤーの支払いのために公的資金から金を出さないという政府の悪習のせいだ。輸入業者が購入する際は通常後払いだが、この先サプライヤーは古い借金が返済されるまで商品を送ってはくれないだろう。当然だ。
それに今日では上層部が保証してもあまり価値がない。マドゥロとウルグアイ大統領の間で直接取り決めが行われた輸入品の支払いすら遅れているのだ。ベネズエラの国内産業とベネズエラ政府の返済能力が疑わしいことは世界中に知れ渡っている。
食料のサプライチェーンは末端までが長く、多くの産業に依存している。特に明白なものだけを挙げても、運送、化学、プラスチック、電気エネルギー、アルミ、農業と小売などがある。これら産業の多くまた、同じように、あらゆる輸入品に依存している。
政府もこの問題を忘れているわけではない。馬鹿げた根拠に基づいて最高裁によって承認された経済緊急事態宣言が意味するのは、つまるところ、政府が問題に気づいてはいるが、政府の直感は誤った政策で対応する方向に向かっているということだ。この宣言により、政府は食料の生産と流通に関連したすべての資産を没収する権限を与えられた。壮麗な独裁体制の用語を使えば、「必要なあらゆる措置を講じる」ための権限ということだ。
輸入削減の結果は惨憺たるものだ。人々は生活必需品が買えることを期待して店に何時間も列をなしている間にも、食料の数も種類も減り続けている。最後の手段として、自生するトロピカルフルーツを頼りにする人や、さらに困窮した人の中にはゴミ箱を漁る人も出てきた。食料を要求する街頭抗議が自然と起きるのも、店や食料運搬車の襲撃も、もはや日常茶飯事だ。
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