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スヌーピーとデザインと村上春樹――ブックデザイン界の巨匠チップ・キッドに聞く

ニューズウィーク日本版 / 2016年6月20日 16時30分

 キッドは生前のシュルツに会っていないが、シュルツ死去の1年後、ピーナッツのビジュアルブック『Peanuts: The Art of Charles M. Schulz』(2001年、邦訳未完)を未亡人らの協力を得て完成させた。さらに最近も、『スヌーピーとチャールズ・M・シュルツの芸術――必要なものだけを(Only What's Necessary)』(邦訳は今年4月、奥田祐士訳、DU BOOKS)を刊行。他にも、コミック『バットマン』に関する本などを著している。



オープン記念展「愛しのピーナッツ。」で、チップ・キッドは1951年3月9日のコミックをお気に入りのエピソードとして紹介 ©Peanuts Worldwide LLC

 著名なデザイナーであるだけでなく、コミックやデザインに関する自著も多いキッド。2013年には、グラフィックデザインの入門書も刊行している。昨年邦訳の出た『GO チップ・キッドのグラフィックデザイン・ガイド』(中村有以訳、CCCメディアハウス)だ。

ジョブズ後の時代のグラフィックデザイン入門書

 キッドは『GO』で、自分の手掛けた作品などを例に使って、グラフィックデザインの基本をわかりやすく丁寧に解説している。形から色、タイポグラフィ、内容をどうデザインに落とし込むかというコンセプトの立て方まで、デザインの細かなテクニックというよりは、根本的な考え方を扱った入門書だ。

 ほんの一部だが、『GO』から引用しよう。

「形」のアイデアの一例として、ビジュアルを上下逆さまにしたらどんな効果を生むか、反転させることで人の注意をどう引きつけられるかを、自分の作品を例に使って説明(42~43ページより)

「色」の解説のページでは、自ら手掛けた映画のポスターを題材に。「ときには色数が少ないほうが......いい」の効果が一目瞭然で、これぞまさにデザインの力だとわかる(74~75ページより)

 故スティーブ・ジョブズの登場をひとつのきっかけに、デザインというものの重要性が広く認知されるようになった。アップルの最高デザイン責任者であるジョナサン・アイブを始め、以前であれば裏方であったデザイナーが、世間一般にも名を知られるようになった。一方で、世界的なデザインコンサルティング会社IDEOのティム・ブラウンが言ったように、「デザインはデザイナーだけに任せるには重要すぎる」という考えも、共有されるようになってきたと言えるだろう。

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