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英EU離脱に憤る若者たち: でも実は若年層は投票しなかった世代

ニューズウィーク日本版 / 2016年6月27日 16時10分

出典:Guardian:"If you're young and angry about the EU referendum, you're right to be" by Rhiannon Lucy Cosslett

 BBCが発表した投票結果の各種分析チャートのページでも、18歳から24歳までの人口が多い地域では投票率が低かったことが指摘されている。

 昨年、ジェレミー・コービンが若者たちを熱狂させて労働党党首に選ばれ、若者たちが再び政治的になったと言われていたが、それはロンドンなど大都市の大学生や大卒の若者たち中心の動きで、全国的に見れば今回のような重要な投票でさえ行ってない若者たちがけっこういたということになる。有権者登録締め切り前の6月初めの時点で、18歳から24歳の層の30%が有権者登録していないことが明らかになっていたが、65歳以上で登録していないのはわずか5%だった。オーウェン・ジョーンズはこう書いている。

 英国の約半数である残留に投じた人々は、怖れや怒りを他の市民にぶつけたくなるだろう。だが、それはことを悪化させるだけだ。離脱派の多くは、すでにのけ者にされ、無視され、嫌われてきたと感じている。現在ソーシャルメディアに現れているような離脱派の人々への侮蔑、いや、上から目線のスノッブな言葉を彼らのコミュニティーが感じたからこそ、今回の結果がある。(中略)もし英国の左派に未来があるとすれば、それはワーキングクラスの人々の生活やコミュニティーとの文化的・政治的な乖離を直視しなければならない。

出典:Guardian: "Grieve now if you must - but prepare for the great challenges ahead" by Owen Jones

中高年の労働者層の多くは離脱票を投じた

 そして若年の労働者層の多くが投票に行かず、そのことが残留派の敗北の理由の一つだったとすれば、英国の左派は全年齢層でワーキングクラスとの親和性が薄いものになったのかもしれない。

 オーウェン・ジョーンズは「Chavs」という著書で、英国の労働者階級が「チャヴ」という言葉でシステマティックに悪魔化され、侮蔑と差別の対象となってきた事実を「ソーシャル・レイシズム」と呼んで批判していた。EU離脱投票で爆発した労働者階級の怒りを左派やリベラルは「醜い」と一蹴して嘆くが、その醜さを生み出した背景には「Chavs」で描かれた英国の社会状況が横たわっている。


[執筆者]
ブレイディみかこ
在英保育士、ライター。1965年、福岡県福岡市生まれ。1996年から英国ブライトン在住。2016年6月22日『ヨーロッパ・コーリング 地べたからのポリティカル・レポート』(岩波書店)発売。ほか、著書に『アナキズム・イン・ザ・UK - 壊れた英国とパンク保育士奮闘記』、『ザ・レフト─UK左翼セレブ列伝 』(ともにPヴァイン)。The Brady Blogの筆者。

ブレイディみかこ


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