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【写真特集】スイス軍の元要塞を生きた遺産に

ニューズウィーク日本版 / 2016年7月1日 17時30分

<90年代以降、スイスでは第2次大戦中に建設された塹壕などの施設の削減が始まり、ホテルや博物館、データセンターといった新たな姿に生まれ変わっている>

 1泊200ドルのスイスの高級ホテルに泊まるなら、部屋からはアルプスの山々か湖の眺望を期待したいところ。だがラ・クラウストラに滞在する客が通されるのは、「眺めのない部屋」だ。

 ゴッタルド峠にあるこの4つ星ホテルでは、全17の客室はごつごつした岩壁に最低限の内装が施されているだけ。ここで宿泊客はほかにはない体験ができる。かつてスイス軍の塹壕だった場所で一晩を過ごせるのだ。

【参考記事】美味しいロンドンはロシアが作る

 ラ・クラウストラだけではない。スイスでは今、元塹壕や武器庫が次々と新しい姿に生まれ変わっている。歴史博物館や堅牢なデータセンターに姿を変えたものもあれば、キノコ農園やチーズ工場になったものもある。

 第二次大戦中、スイスは国中に約8000の塹壕を張り巡らせた。枢軸国に囲まれた永世中立国が侵略を避けるには、何より強力な要塞が必要だった。だが情勢の変化で脅威は低下し、維持費はかさむ一方。軍は90年代から塹壕の削減を始めた。

 軍の防御施設に加えて、冷戦期には数多くの一般家庭に核戦争に備えたシェルターが設置された。これらも現在では物置やワインセラーなどとして、上手に有効活用されている。


ゴッタルド峠の山中にあるラ・クラウストラは塹壕の外観を残している


アッティングハウゼン近郊の要塞に残る指令室


元要塞を改装したサッソ・サン・ゴッタルド博物館で武器の解説をするガイド

ギスビルの元塹壕の弾薬が並んでいた棚ではスイスチーズが熟成される


フルロイエンタールにある砲兵隊の要塞に残された手術室


エルストフェルト近郊のかつての武器庫はキノコ生産者の手に渡り、栽培に使われている


ファウレンゼーにある元要塞前ではかつて使われた武器の銃口の先で牛が草をはんでいる

Photographs by Arnd Wiegmann-Reuters

【撮影:アルント・ウィーグマン】
ドイツ生まれ。20代はスタジオで広告写真に携わる。その後ニュース写真に転向し、現在はロイター通信で主に金融やビジネス、スポーツなどの撮影を担当している。スイスのチューリヒ在住

<本誌2016年2月9日号掲載>

≪「Picture Power」へのリンクはこちら≫

Photographs by Arnd Wiegmann

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