ISISはなぜトルコを狙うのか
ニューズウィーク日本版 / 2016年6月30日 17時0分
そのためISISにとって、今のトルコはNATOの加盟国の中で最もアクセスしやすく、衝撃的なテロを実行しやすい国になっている。ヨーロッパの主要国やアメリカに工作員を送り込むには国境警備や空港のセキュリティーチェックをすり抜ける必要があるが、トルコで欧米人観光客や欧米の政府要人を狙えば、はるかに容易に欧米でのテロと同様の効果を上げられる。
トルコ政府は取締りを強化しているが、ISISのメンバーや密航業者の一部は捜査の目を逃れ、さらに深く地下に潜伏しているはずだ。トルコでは80年代から武装組織クルド労働者党(PKK)など多くの国内外の過激派がテロを繰り返してきた。過激な思想に引き寄せられる層も広がり、ISISにとってはいつでも利用できる新兵や協力者の人材プールがあり、国内のネットワークを手軽に活用できる好都合な国になっている。
シリアとイラクで支配地域を失いつつあるISISは、テロ攻撃を繰り返すことで世界中のシンパとテロを恐れる人々の両方に存在感をアピールできる。この1年余りトルコで起きたISISとPKK関連の多くのテロに加え、アタチュルク空港でのテロは、トルコの治安・情報当局の連携体制の甘さを炙り出した。
トルコの空港のセキュリティーチェックはヨーロッパの国々と比べれば厳重だが、ISISにとってのトルコの戦略的な位置づけを考えれば、現状の警備は十分とは言い難い。ISISが追い詰められれば、テロ攻撃はさらに激化する公算が大きい。トルコは今すぐ西側の同盟国とパートナーにテロ対策で支援を要請すべきだ。
ドルク・エルグン(イスタンブールの経済・外交政策研究センターの安全保障アナリスト)
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