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イギリスの「モデル」、ノルウェーはなぜEU非加盟?

ニューズウィーク日本版 / 2016年7月4日 19時30分

「他国からコントロールされたくはない」。これは、ノルウェー人の口からEUに関してよく出る言葉だ。他国からの管理を拒むノルウェー人の考え方には、歴史が関係している。400年に及ぶデンマークの支配を得た後、ノルウェーはスウェーデンとの連合に向かった。連合同盟が解消されたのは1905 年。やっと自由を勝ち取った小国ノルウェーの国民の愛国心が、際立っているのはこのためだ。



自分の国が大好き。自分たちで築き上げていきたい


日本で同じことが起きれば、色々と誤解されそうなノルウェーのナショナルデー Photo:Asaki Abumi

 ノルウェー人の愛国心の代表といえば、憲法記念日(ナショナルデー)。毎年5月17日になると、首都オスロでは、子どもたちが国旗を掲げて、大通りを王宮まで大行進する。王室は王宮から手を振り、大人たちは民族衣装で楽しそうだ。素敵な行事に見えるが、同時に、半端ない愛国教育に、他国から来たものは目を丸くする。

 支配や連合の歴史が続いたため、やっと民主的な自由を手に入れたのだ。だからこそ、「ノルウェー人の耳に、"同盟"という言葉は警報として響く」と、ユーロピアン・ムーヴメント(以下、EU賛成団体)代表のヤン・アイリック・グリンドハイム氏は語る

 EU反対団体代表カトリーネ・クレーヴェランド氏は、1994年当時をこう振り返る。「ノルウェー人にとって、庶民による統制や民主主義は、とても重要です。"団結"という言葉もキーワードでした。"世界はEUよりも、もっと広い。ブリュッセルは遠い。自分たちの国で、自分たちで決めよう"とね」。

「1994年に勝利をしたのは庶民。負けたのは、EU賛成派だった権力者、メディア、政府。アーティスト、労働者、漁業者、農民はEUを望みませんでした。

1994年、「地方青年団体」の女性たちによる運動。切り株には「EU反対」と書かれている。Photo:Nei til EU/ Berit Moen


EU賛成派だったメディア、でも国民国家の重要性を強調

 賛成・反対団体の両代表は、「ノルウェーメディアはEU賛成派だった」と口を揃える。今回のイギリスのEU離脱も、ノルウェーメディアは全体的に「欧州に混乱が広がる」と残念がり、悲観的だ。

「1994年も、大手メディアや編集部はEU賛成派でした。しかし、その報道の仕方は、EUに対して、非常にネガティブでしたよ。まるで、すべてが悪い方向に行くかのようにね。欧州の団結よりも、国民国家のほうが、より重要で正しいのだと、報道機関はこだわりすぎなのです。私個人の意見ですが、EUが誤解されやすい理由のひとつは、報道にもあると思います。EUにも課題はありますが、報道による噂ほど、ひどくはありません」と賛成団体は語る。

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