英EU離脱の教訓:経済政策はすべての層のために機能しなければ爆弾に引火する
ニューズウィーク日本版 / 2016年7月11日 17時10分
ブレグジット後の英国がリセッションに突入すれば、2020年までに財政均衡化を果たすと言ってゴリゴリの緊縮を進めてきたオズボーン財相の計画は持続不可能になる。社会の末端で餓死者が出ても、子供の貧困率を押し上げても、障害者の生活保障を極限以上に削減して国連の調査が入るというたいへん不名誉なことになってもひたすら財政均衡を目指した保守党の緊縮財政が、皮肉なことにブレグジットで終焉を迎える、と同教授は書いている。
これは緊縮という破滅的な実験の終焉だ。それは屈辱的な失敗に終わるだろうと私は最初から反対していた。
「もう(政府に)金は残されていないのだ」とあのときオズボーン財相は言った。もしあのときになかったのなら、いまは間違いなく何も残されていないだろう。彼自身が爆弾で吹っ飛ばしてしまったのだから。
出典:Guardian:"The Brexit vote will kill austerity" by David Blanchflower
こうなるまでわからなかったのか、と思えば「緊縮は病気である」と言われるのも無理はない。
だが、緊縮がいつかは引火する爆弾だとすれば、抱えていたのは英国だけではない。
昨年、シリザ率いるギリシャが反緊縮の狼煙を上げてEUに反旗を掲げた時、欧州理事会議長ドナルド・トゥスクは「政治の季節」と言われた1968年のような反体制運動や革命が欧州全土に広まるのではないかと懸念していたという。EUはギリシャを抑えることには成功した。だが、不満を抱えた爆弾は欧州にはいくつも転がっている。
[執筆者]
ブレイディみかこ
在英保育士、ライター。1965年、福岡県福岡市生まれ。1996年から英国ブライトン在住。2016年6月22日『ヨーロッパ・コーリング 地べたからのポリティカル・レポート』(岩波書店)発売。ほか、著書に『アナキズム・イン・ザ・UK - 壊れた英国とパンク保育士奮闘記』、『ザ・レフト─UK左翼セレブ列伝 』(ともにPヴァイン)。The Brady Blogの筆者。
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。
ブレイディみかこ
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