ボリス・ジョンソン英外相の危うい船出
ニューズウィーク日本版 / 2016年7月20日 19時15分
【参考記事】ボリス・ジョンソン英外相の嘆かわしい失言癖
ヒラリーの耳にこうした発言が入っているのはほぼ間違いない。もし11月に彼女が大統領に就任すれば、イギリスとアメリカが保ってきた特別な二国間関係は、別の意味で「特別な」関係をスタートさせることになるだろう。
賭けのような人事
確かに、ボリス・ジョンソンは機知に富んで知性もあるが、外交手腕がない。似たような経歴のお仲間となら上手く付き合えるかもしれないが、彼はミャンマーからマダガスカルに至るまで、世界各国の首脳を温かく歓迎し、魅了しなければならない。外交関係は、ジョンソンの前任にあたる歴代外相が何十年もかけて慎重に培ってきたものだ。それがたった一つの失言で台無しになることもある。そういう世界でジョンソンはやっていかなければならないのだ。
ジョンソンを外相に選んだメイは大胆だった。彼女はそうすることで、イギリスはEUに留まる方がいいという自らの主張と相容れなかった人々をなだめようとした。また前任のキャメロンから距離を置くため、組閣では思いきって異なる方向性を打ち出した。しかしそうした決断の中には、キャメロン前政権からメイが引き継いだ部分もあった。イギリスの国内政治のしがらみを逃れるために、あえて海外の高い賭けにも打って出るという点だ。キャメロンは保守党内の離脱派を抑えるためにEUからの離脱の是非を問う国民投票を公約するという賭けに出た。キャメロンは賭けに敗れ、大きな代償を支払った。
世界におけるイギリスの特別な立場を守るためにも、ボリス・ジョンソンというリスクの高い選択をしたメイは、せめてキャメロンよりも運が良いことを祈ろう。
Brian Klaas, LSE Fellow in Comparative Politics, London School of Economics and Political Science
This article was originally published on The Conversation. Read the original article.
ブライアン・クラアス(英ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス研究員、比較政治学)
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