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出会い系サイトから危険ドラッグまで、グレーなビジネスで荒稼ぎする人たち

ニューズウィーク日本版 / 2016年7月25日 17時8分

 とはいえ、彼らは何者なのか? 「"出会い系サイトの帝王"が、オモテの顔は都心に社員100人以上のオフィスを構える広告代理店の経営者」だなどという記述を目にしてしまうと、余計に話がややこしくなってしまう。

【参考記事】震災1週間で営業再開、東北の風俗嬢たちの物語

 ただ重要なのは、そういった感じ方が、こちらの勝手なイメージによるものでしかないということである。"悪い人"は目つきが鋭く、彫り物があって、キレやすく、ひょっとすると飛び道具すら持っているかもしれない――。そんな無責任なイメージと現実は、たぶん大きく乖離している。そこにこそ真実があるのだ、きっと。



 たとえば危険ドラッグを仕切る"帝王"が、"サブカルオタク"であるといったほうが近い本格的な研究者だったりする。

 K氏は図らずも危険ドラッグのドン・キホーテとなった。危険ドラッグといえば半グレのイメージだが、少なくともK氏は危険ドラッグに正面から向き合い、その薬物の正体を知りたいと努めてきた。曖昧なままに放置することが我慢ならず、研究分析機関の協力を得ながら、薬物の透明化に努力したともいえよう。(104ページより)

 つまり、彼は薬物で人間を壊して金を儲けようと思ったわけでは決してなく、「業界の安全のために法律の範囲内で業者みんなが仕事できるよう考えている」(102ページより)というような純粋性を備えているのだ。

【参考記事】刑事裁判の新制度「一部執行猶予」は薬物中毒者を救うか

 初期の関東連合を牛耳り、2010年初頭に元横綱朝青龍に殴打された人物でさえ、六本木のモンスターと呼ばれながらも実は(暴走族上がりではあるのだが)決して武闘派ではない。

 とはいっても、「彼らはグレーなんだから大目に見ましょう」という意味ではない。当然のことながらケースによっては犯罪の領域に踏み込むこともあるのだろうし、だとすれば正当に法的な裁きを受けるべきだ。

 しかし重要なのは、それ以前に注目しなければならない点があるということ。すなわち、犯罪が犯罪として成り立つか否かという時代および状況のなかで、私たちが生きているという現実。その点から目を離してはならないと考えるのである。

 インターネットの普及などの影響によって、逆にいろいろなものの本質が見えにくくなっている。"グレー"なビジネスがグレーなままで成り立ってしまうのも、きっとそのせいだ。そして、おそらくその数はこれからも増えていくだろう。だからこそ、すぐに解決策は見つからないにしても、この現実に注目しておく必要があるのではないだろうか。


『闇経済の怪物たち――
 グレービジネスでボロ儲けする人々』
 溝口 敦 著
 光文社新書


[筆者]
印南敦史
1962年生まれ。東京都出身。作家、書評家。広告代理店勤務時代にライターとして活動開始。現在は他に、「ライフハッカー[日本版]」「Suzie」「WANI BOOKOUT」などで連載を持つほか、多方面で活躍中。2月26日に新刊『遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣』(ダイヤモンド社)を上梓。


印南敦史(作家、書評家)


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