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豪雨で160人死亡、相次ぐ水害に中国人は怒って...いない?

ニューズウィーク日本版 / 2016年7月26日 6時17分

7月4日、街中で魚を捕まえる南京市の住民(「21CN」の報道より)

 報道では直接大きな被害を受けた人、あるいは日頃から政府批判を繰り返している人々の声が大きく紹介されているわけだが、それ以外の人々は普段からあまり高望みをしていないだけに、さほど政府に対して怒っていないという印象だ。

 もっとも、これは中国政府にとって喜ばしい話ではない。「民衆から頼られる政府」というイメージこそが独裁政権の「支配の正統性」となっているからだ。そこで登場するのがプロパガンダだ。習近平総書記は「第一線で活躍した英雄模範、先進典型を広く宣伝し、組織・個人を表彰し、ポジティブ・エネルギーを広めよ」と訓示している。

 かくして「濁流に飛び込み土嚢を積み上げる武装警察五壮士」「危険を顧みず現地を取材した記者」「動けない老人を背負って運ぶ消防隊員」など、ポジティブ・エネルギー(中国語で「正能量」。習近平政権になって登場した言葉で、報道やネットからネガティブ・エネルギーを一掃することを目指している)あふれるプロパガンダが流されまくっている。

 一般民衆が求めているのは都市排水網の整備はもちろんのこと、「早めに正確な天気予報を出す」「バスが止まったらちゃんと告知する」といった普通なことなのだが。

[筆者]
高口康太
ジャーナリスト、翻訳家。1976年生まれ。千葉大学人文社会科学研究科(博士課程)単位取得退学。独自の切り口から中国・新興国を論じるニュースサイト「KINBRICKS NOW」を運営。著書に『なぜ、習近平は激怒したのか――人気漫画家が亡命した理由』(祥伝社)。


高口康太(ジャーナリスト、翻訳家)


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