逃げ切るのか、中国――カギはフィリピン、そしてアメリカ?
ニューズウィーク日本版 / 2016年7月26日 18時6分
「判決」を「宝物」のようにかざしながら、中国に徹底して譲歩させる道を選んで、二国間で話し合い、最大限の経済的利益を中国から引き出す、というのが、フィリピンの戦略だとみなすことができる。
ラモス元大統領の特使派遣表明は、その何よりの証拠と言っていいだろう。
日本は――?
さて、このような中、中国の思うままにさせておいていいのか?
モンゴルにおけるASEM(アジア欧州会議)では安倍総理が、そして今般のASEAN外相会議では岸田外務大臣が、それぞれ中国に「判決を受け入れるように強く主張」してはいる。
しかし、中国は言うに及ばず、フィリピンもアメリカも、「うまく」立ち回っているではないか。アメリカは判決に関しては「中立だ」という立場を示す傾向に動き始めてさえいる。
真っ直ぐに行動しているのは、日本だけのようにも映る。
このママでは、中国は逃げ切ることだろう。
前回のコラムにも書いたが、もう一度書くことをお許し願いたい。
中国には決定的な弱点があるのだ。それは建国の父である毛沢東が、実は日本軍と共謀して強大化し、こんにちの中華人民共和国を誕生させたという動かぬ事実である。その事実を隠すために、中国は言論の自由を抑圧している。中国共産党のこの最大の秘密を中国人民全員が知ったら、中国共産党はたちまち人民の信頼を失い(今でも失いつつあるが、しかし完全に失い)、中国はその瞬間に崩壊するだろう。
筆者は何も中国の崩壊を望んで、この事実を書いているのではない。
人民を騙し、世界を騙して、歪んだ論理で突き進む覇権が、どれほど危険であり、人類に災いをもたらすかを言っているのである。それは必ず、人類の尊厳を損なう結果をもたらす。
人類が、最後には「尊厳」を選ぶことを、忘れてはならない。そう望みたい。
[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』『チャイナ・ジャッジ 毛沢東になれなかった男』『完全解読 中国外交戦略の狙い』『中国人が選んだワースト中国人番付 やはり紅い中国は腐敗で滅ぶ』『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』など著書多数。近著に『毛沢東 日本軍と共謀した男』(新潮新書)
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。
≪この筆者の記事一覧はこちら≫
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)
この記事に関連するニュース
-
ASEAN拡大国防相会議 「威圧的で危険な行為が増加」南シナ海情勢めぐり米中が互いにけん制
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年11月22日 1時26分
-
中国国防相が米国防長官との会談拒否、「残念」とオースティン氏
ロイター / 2024年11月21日 9時14分
-
「朝鮮半島で戦乱許さず」 習近平氏が米国に表明、台湾問題「独立に反対すべき」と求める
産経ニュース / 2024年11月17日 11時4分
-
米中首脳会談 ペルーで16日開催 北朝鮮兵の参戦問題、台湾周辺も議論
産経ニュース / 2024年11月14日 9時30分
-
中国国家主席、トランプ氏に祝意 「正しい関係」模索呼びかけ
ロイター / 2024年11月7日 18時33分
ランキング
-
1G7外相会合で「ロシアに武器輸出」非難に中国政府「武器を提供したことはない」と反論
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年11月27日 18時41分
-
2レバノン停戦、市民に不信感も=「双方が違反する」と懸念
時事通信 / 2024年11月27日 19時55分
-
3中東、レバノン停戦を歓迎=イラン「犯罪者の処罰」訴え
時事通信 / 2024年11月27日 20時28分
-
4ソウルで記録的大雪=11月の最多積雪更新―韓国
時事通信 / 2024年11月27日 19時31分
-
5ミャンマー軍トップに逮捕状を請求 国際刑事裁判所の主任検察官「ロヒンギャの迫害に関与」
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年11月27日 20時47分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください