不安なイギリスを導く似て非なる女性リーダー
ニューズウィーク日本版 / 2016年7月28日 17時10分
ただし、2016年のイギリスは1975年とは違う。メイは、EU離脱の国民投票で見えたグローバル化の勝者と敗者の分断に緊急に対処すべきだと認識している。
サッチャーは首相就任時に声が高いことをからかわれた。メイの首相就任時には大衆紙の1面に、彼女の細いハイヒールが保守党内のライバルを踏みつぶすコラージュが載った。新聞の古い体質はなかなか変わらない。だがイギリスも女性指導者には慣れてきたから、メイはサッチャーより敬意を持たれるだろう。
【参考記事】ブレグジット後も、イギリスは核で大国の地位を守る
イギリスは不安な時代に強い女性に頼る傾向がある。エリザベス1世もビクトリア女王も、エリザベス2世もサッチャーも、大変な時代にトップに立った。メイはライバルたちと違って国民の空気を完璧に読み取り、深刻な不和が表面化したこの時代に調和をもたらすと誓った。
今のイギリスは、エリートとマッチョな男性政治家に引き裂かれている。多くの点で昔ながらの穏健な保守派であるメイは、この時期にぴったりの女性リーダーかもしれない。
[2016.8. 2号掲載]
エライザ・フィルビー(ロンドン大学キングズ・カレッジ歴史学講師)
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