ドーピング防止には「生体パスポート」しかない
ニューズウィーク日本版 / 2016年8月1日 20時0分
<世界ランキング元1位、伝説のゴルファー、グレッグ・ノーマンが、アスリートの立場からドーピング疑惑の選手と戦いたくない、まして負けたくない気持ちを代弁>
先週初め、国際オリンピック委員会(IOC)がリオデジャネイロ五輪からのロシア選手の全面排除を回避した見送ったというニュースが飛び込んできた。ロシア選手出場の可否は、それぞれ各種目の国際競技団体の判断に委ねられることになった。
IOCの決定は総じて不評だが、個人的にはその判断を理解できる。国が関与したドーピングの責任をロシア選手全員に負わせるのは過酷過ぎる。処分を受けるべきなのは禁止薬物に手を染めた個々の選手であり、ロシアの選手全員ではない。
とはいえ、ロシアで組織的なドーピングが行われていたのも事実。ロシア陸上女子中距離のユリア・ステパノワの勇気ある内部告発を機に実態が明らかになった。だが今回のIOCの決定はいっそうの内部告発を奨励するものではなく、逆に萎縮させる。自身も違反歴があるという理由でステパノワも出場できないことになったからだ。国際陸連では出場停止処分も解け、試合にも復帰しているのに。
【参考記事】出場停止勧告を受けたロシア陸上界の果てしない腐敗
【参考記事】ロシア陸上界から五輪出場を認められたクリシナに「裏切り者」とバッシングの嵐
各競技団体は、スポーツとオリンピックの健全性を守るため、断固とした決断を下さなければならない。不正やドーピング違反などスポーツの規律を破った選手は一切容赦せず、永久追放にすべきだ。
【参考記事】妖精シャラポワは帰ってくる
クリーンな選手は、極限のレベルで競技に挑むために人生を捧げている。それなのに五輪でロシア選手と同じスタートラインに立たなければならないのははらわたが煮えくり返る思いだろう。もしメダル争いでドーピング疑惑のある選手に敗れたりすれば、その衝撃は想像を絶する。
記録は高校から引退まで
ドーピング防止策として今後は、「生体パスポート」を強く推奨する。選手の潔白を証明する唯一の方法だ。生体パスポートは、従来のように検査で体内から禁止物質が検出されるか否かで判断するのではなく、スポーツ選手の身体の生理学的な変化を継続的に観察することでドーピングを検知する方法だ。
反ドーピングに向けた取組みに変革をもたらす可能性を秘めた生体パスポートを、これからは世界中で高校レベルから採用し、アマチュアやプロのスポーツ選手が引退するまで記録を蓄積し続けるべきだ。そうすれば、ドーピング違反に対する観察や検査体制を確立し、一度でも不正やドーピング違反が発覚した選手には永久追放の処分を下す厳しい方針を貫くことができる。
【参考記事】「ジカ熱懸念」で五輪を辞退するゴルファーたちの欺瞞
IOCはオリンピック発祥の地ギリシャのオリンピアに立ち返り、古代の慣習から学ぶべきだ。古代ギリシャでは、不正を行った選手は多額の罰金を課せられたうえ、罰金を元手に立てたゼウス像に、見せしめとして選手の名前と不正行為の内容が刻まれた。現代なら、そこに選手の出身国も刻まれるべきだろう。
グレッグ・ノーマン(プロゴルファー)
この記事に関連するニュース
-
東京五輪銀・競歩のエースに“あり得ない”血液ドーピング…疑惑を晴らすのは陸上界の重要な仕事だ
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年11月9日 9時26分
-
競歩・池田向希のドーピング違反疑惑に日本陸連声明 パリ五輪出場の経緯と今後の支援約束
THE ANSWER / 2024年11月3日 12時7分
-
池田選手にドーピング違反疑い 競歩「銀」、暫定処分
共同通信 / 2024年11月3日 1時34分
-
競歩・池田選手「身に覚えない」 ドーピング暫定処分受け、五輪銀
共同通信 / 2024年11月2日 22時3分
-
五輪銀の競歩・池田向希がドーピング違反の疑いで暫定処分…タレント「みちょぱ」のはとこ
東スポWEB / 2024年11月2日 10時6分
ランキング
-
1G7外相会合で「ロシアに武器輸出」非難に中国政府「武器を提供したことはない」と反論
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年11月27日 18時41分
-
2レバノン停戦、市民に不信感も=「双方が違反する」と懸念
時事通信 / 2024年11月27日 19時55分
-
3中東、レバノン停戦を歓迎=イラン「犯罪者の処罰」訴え
時事通信 / 2024年11月27日 20時28分
-
4ソウルで記録的大雪=11月の最多積雪更新―韓国
時事通信 / 2024年11月27日 19時31分
-
5ミャンマー軍トップに逮捕状を請求 国際刑事裁判所の主任検察官「ロヒンギャの迫害に関与」
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年11月27日 20時47分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください