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書店という文化インフラが、この20年余りで半減した

ニューズウィーク日本版 / 2016年8月2日 15時45分

<90年代以降の四半世紀で、街中の書店の店舗数は全国でおおむね半減した。これに伴い国民の読書実施率も下がっている。思いがけない本にも出会える街の書店を、時代遅れの遺物にしてしまって良いのか>

 ネット書店の台頭によって、街の書店は苦境に立たされている。

 総務省『経済センサス』の産業小分類統計によると、書籍・文房具小売り事業所(書店・文具店)の数は、1991年には全国で7万6915あったが、2014年には3万7817に半減している。人口10万人あたりの店舗数も、62.0から29.8に半減した。

 地域別の変化もみてみよう。この期間にかけて、人口10万人あたりの店舗数が各都道府県でどう変わったかを示すと<図1>のようになる。

【参考記事】「世界最大の書店」がなくなる日



 この四半世紀にかけて、全国的に街の書店が淘汰されているのがよく分かる。まるで、文化の「生き血」が抜かれているかのような変化だ。

 2014年の地図はほぼ真っ白で、どの県が相対的に高いのかは不明だが、おおむね都市よりも地方で値は高い。都市部では小さな個人経営の店が淘汰され、大規模店が幅を利かせているためだろう。売り場面積で見たら違った様相になるかもしれないが、ここまで書店の数が減っていることには驚かされる。



 時代の変化と言えば、それまでかもしれない。情報化の進展により人々のライフスタイルは大きく変わっているので、書籍の購入方法が変化するのは当然だ。しかし街の書店を、時代遅れの遺物と決めつけて良いのだろうか。

 本はネット書店でも街の書店でも買えるが、後者の魅力は思わぬ本にバッタリ出会えること。リアルの書店では、目当て以外の本を手に取ることがしばしばあり、発想の幅を広げることができる。ぶらりと入って「ハッ」という気付きを与えてくれる本屋さん。インターネットが普及した現在でも、その魅力(強み)は何にも代え難い。

【参考記事】マンガだけじゃない! 日本の子どもの読書量は多い

 こうした環境の変化もあってか、国民の読書実施率は下がっている。過去1年間に趣味として本を読んだことがある人の割合は、1991年では45.7%だったが、2011年では38.8%に減っている(総務省『社会生活基本調査』)。<図2>の年齢グラフによると、本を読む頻度が減っているのは子どもや若者であることが分かる。



 スマホの普及により、他者とのコミュニケーションが時間的にも空間的にも際限が無くなっていること、アプリゲームの流行など、様々な要因が考えられるが、気軽に本を手に取れる環境が失われていることも大きいのではないだろうか。身近な地域における書店の減少は、その顕著な事例だ。

 子どもの場合、目当ての本を定めてネットで購入するより、書店や図書館をぶらぶらして、興味を引かれた本を手に取ることが多い。彼らが気軽に本に接することができるような環境を整備・維持することは重要だ。

 フランスでは街の書店が文化の象徴とみなされ、送料無料のネット販売を禁じる法律(通称「反アマゾン法」)が施行されている。日本でもこうした社会制度上の取り組みを検討してみてはどうだろうか。

<資料:総務省『経済センサス』、
    総務省『社会生活基本調査』>

≪筆者の記事一覧はこちら≫

舞田敏彦(教育社会学者)

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